会見リポート
2021年06月08日
13:30 〜 14:30
オンライン開催
「TOKYO2020+1」(2) 石坂友司・奈良女子大学准教授
会見メモ
※本会見の動画はYouTubeに公開しません。
奈良女子大学准教授の石坂友司さんがリモートで会見し、コロナ禍で五輪を開催することの意義、五輪開催が日本に残すレガシーなどについて話した。
石坂さんは、五輪が都市・社会に与える影響などについて研究をしてきた。
編著に『〈オリンピックの遺産〉の社会学: 長野オリンピックとその後の十年』(青弓社、2013年)、著書に『現代オリンピックの発展と危機1940-2020 二度目の東京が目指すもの』(人文書院、2018年)などがある。
司会 森田景史 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)
会見リポート
「中止なら無形遺産残らない」/無観客なら開催できる
滝口 隆司 (毎日新聞社論説委員)
東京五輪・パラリンピックの開催可否が国民的な議論になる中、スポーツ社会学を専門とする奈良女子大の石坂友司准教授がこの問題を論じた。
石坂氏は「新型コロナウイルスの感染拡大を招かないことが大前提」とした上で、「無観客であれば開催は可能」という自らの考えを示した。
メディアの世論調査では五輪開催に対する「反対派」が多数を占めると報道されている。
しかし、「延期すべき」という回答を反対派とみるか、賛成派と数えるかで評価は異なる。「データを見るだけで論じることはできない」というのが石坂氏の考えだ。
SNSの影響も大きい。スポーツ社会学者の間では、パンデミックが起きる前は「SNSで世の中は『五輪一色』となると見られていた」という。
ところが、コロナ禍で逆の現象が起き、感染拡大の不安から五輪に対する「忌避的反応」が増幅している。熟議によって世論が形成されるのではなく、SNSによる「情動」が反対運動を加速させているという見方だ。
石坂氏は複合的な視点から五輪の評価が必要だと主張した。その一つが大会後の「遺産」だ。
1998年長野冬季五輪の10年後、現地調査を行った。カーリング会場だった軽井沢町に足を運ぶと、隣の御代田町でもカーリングに親しむ住民のネットワークができていた。当初の計画にはない遺産だった。
「大会を中止にすれば、形のない『ソフトなレガシー』は残らない。今は開催することだけが自己目的化しているのではないか。五輪の意義を改めて考える必要がある。そうしなければ、五輪の価値は減じられる」
感染リスクを左右する観客制限の問題について、「政府が有観客を検討しているのは非常に危ないことだ」と石坂氏。それでも中止ではなく開催を望むのは、無形の遺産に期待を寄せるからだ。
ゲスト / Guest
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石坂友司 / Yuji Ishizaka
奈良女子大学准教授 / Associate Professor, Nara Women's University
研究テーマ:TOKYO2020+1
研究会回数:2