2021年06月01日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「核合意をめぐる米・イラン間接交渉と大統領選挙の行方」田中浩一郎・慶応義塾大学教授

会見メモ

イラン核合意の立て直しに向け、イランとアメリカはEU(欧州連合)などを介した間接的な協議を進めている。

慶應義塾大学教授の田中浩一郎さんが登壇し、交渉の行方、6月18日に予定されるイラン大統領選挙が持つ意味と今後の見通しについて話した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

 


会見リポート

ライシ師勝利で革命体制存続へ

二村 伸 (NHK解説委員)

 イランの核合意を立て直すための交渉は予想以上の進展が伝えられるが、イランとアメリカの主張は相容れず、中道派のロウハニ大統領在任中に妥結する見通しは立っていない。核合意をめぐる交渉の行方について田中教授が「興味深い」と指摘したのが流出したザリーフ外相の極秘インタビューだった。「合意によってヒーローは生まれない。むしろ国内の批判を浴び、生贄が出る」と外相は述べた。核合意以上のものは生まれず、核関連以外の制裁の解除はないことを示唆したものだと説明する。譲歩しすぎると自らの立場が危うくなるということだろうか、過剰な期待は禁物のようだ。

 インタビューがどこから流出したか明らかでないが、外相は「シアター(戦場)の利益が他の利益より優先されている」と述べた。田中教授によれば、イランの外交が戦場のマインド、つまり軍に動かされていることに不満を抱いたものだという。

 6月18日に投票が行われる大統領選挙は、ハメネイ師に任命された護憲評議会の資格審査で、軍出身候補をはじめロウハニ大統領に近いラリジャニ前国会議長やアフマディネジャド前大統領も失格となり、有力候補はライシ師だけとなった。前回の大統領選挙で大差で敗れたライシ師にとって、最高指導者ハメネイ師の後継者になるためには今回の選挙で圧倒的な勝利が必要だが、他に有力候補がいないため投票率の低下が予想され、それがライシ師の勝利にどう影響するか注目される。

 イランはライシ師が革命後の体制を維持し、反米・帝国主義路線を継承することになると田中氏は見ている。敵対関係にあったサウジアラビアは、アメリカとの関係の変化を受けイランやトルコ、カタールなどとの関係改善に動き出したという。一方でイスラエルはネタニヤフ政権後もイランとの緊迫した関係が続くと見られる。イランは今後も中東の緊張要因になるのだろう。イランの第一人者による明快な講演だった。


ゲスト / Guest

  • 田中浩一郎 / Koichiro TANAKA

    慶応義塾大学教授 / professor, Keio University

研究テーマ:核合意をめぐる米・イラン間接交渉と大統領選挙の行方

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