2021年06月07日 16:00 〜 17:00 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(62) 日本の外国人の生活困窮 稲葉奈々子・上智大学教授

会見メモ

上智大学教授の稲葉奈々子さんが登壇し、新型コロナウイルスの感染拡大が外国人コミュニティーに与えた影響、支援のあり方について話した。

稲葉さんは外国人支援を行う「移住者と連帯する全国ネットワーク」の運営委員、「反貧困ネットワーク」の理事も務めている。

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 


会見リポート

外国人、生活保護ためらい困窮も/地域社会の支えに希望が

桜井 泉 (朝日新聞オピニオン編集部)

 コロナ禍のもとで経済の悪化が、外国人の生活にどのような影響を与えているのか。外国人の支援活動をしている社会学者の稲葉さんが、聞き取り調査を踏まえて報告した。

 「非正規滞在者」は、約8万人いるが、在留資格がないために生活保護など公的支援から除外されている。しかし、定住や永住の資格を持つ正規滞在の外国人であっても、生活保護の申請をためらうのが現実だという。

 厚労省は最近、「生活保護は国民の権利」とし、ためらわずに相談するよう呼びかけている。だが、外国人に対する生活保護は、「権利としては認められず、行政措置として適用しているだけだ」という。そこで不都合なことが起きる。

 定住資格があっても、生活保護を受けると、3年ごとの更新が1年ごとの更新になったり、将来、永住資格がもらえなくなったりするなど、ペナルティーが課せられることを恐れるのだという。「実際に入管職員にそう言われた人もいる」と稲葉さんは言う。

 第2のセーフティーネットといわれる生活者自立支援制度や求職者支援制度の場合は、日本語の読み書きができないと利用できない。これでは、職場を解雇された外国人は、路頭をさまようしかない。

 こうした外国人は、NGOなどの支援団体や教会や寺などの宗教関係者に支えられている。さらに調査で明らかになったのは、地域社会の人たちが、かなり支えていることだった。

 同胞で比較的余裕のある人はもちろんだが、日本人の大家さんがコメや野菜をくれたり、家賃の支払いを待ってくれたりすることもあるそうだ。

 そこに希望がある。だが、それは、余りにもかすかな希望だ。


ゲスト / Guest

  • 稲葉奈々子 / Nanako Inaba

    上智大学総合グローバル学部 総合グローバル学科教授 / professor, Faculty of Global Studies Sophia University

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:62

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