2021年05月31日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「太平洋の中のフランスと多国間軍事協力」ジャン=マチュー・レイ海軍少将、アルノー・トランシャン海軍大佐

会見メモ

写真左からジャン=マチュー・レイ海軍少将、アルノー・トランシャン海軍大佐

 

フランス海軍は毎年、士官候補生の訓練航海「ミッション・ジャンヌ・ダルク」を行い、これに参加するヘリコプター搭載型水陸両用艦「トネール」は今年5月9日、海上自衛隊佐世保基地に寄港した。同11日から16日には多国間統合訓練「アーク21」が行われ、フランス陸軍が日本国内の訓練に初めて参加した。

フランス海軍のアジア太平洋地域での戦略やミッションなどについて、ジャン=マチュー・レイ海軍少将(太平洋管区統合司令官兼仏領ポリネシア駐留仏軍司令官)がフランス領ポリネシアのタヒチから、アルノー・トランシャン海軍大佐(ヘリコプター搭載型水陸両用艦「トネール」艦長)が海上から、それぞれオンラインで会見した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 佐保奈美(フランス大使館)、菊地歌子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

均衡乱す中国の軍拡に懸念/「我々の存在が抑止力に」

鶴原 徹也 (読売新聞社編集委員)

 萩原朔太郎が「あまりに遠し」と嘆じたフランスだが、「インド太平洋の国」でもある。レユニオンやニューカレドニアなどの海外領土を持つからだ。「アジアの時代」を受けて仏政権は近年、インド太平洋国家としての側面を強調するようになってきた。日米印豪4カ国を地域の戦略的パートナーとしている。

 その文脈で仏軍は5月中旬、自衛隊が実施した離島防衛共同訓練に米豪両軍と共に参加した。目玉は「尖閣有事」を想定した霧島演習場での地上訓練。仏軍参加は初めてだ。

 レイ仏海軍太平洋管区統合司令官らのリモート会見は時宜を得たものだった。当然、質問が相次ぐ。直球も投じられた。「尖閣有事の際、フランスは日本の味方になるのか?」

 統合司令官は一般論で答えた。

 「我々の任務は第1に仏国民・領土を守ること」「地域は米中対立や領有権争いなど重大な懸案を抱えている」「我が国の主張は自由航行の維持・国際法の順守・交渉による紛争解決だ」「我が国は中国を含むどの国にも敵対していない。我々の存在が抑止力として働くことを期待する。紛争には介入しない」

 優等生的回答だ。

 ただ、中国の軍事膨張を地域の均衡を崩す動きとして警戒しているのは間違いない。「極東と東シナ海・南シナ海で軍事化が強力に進んでいる」と指摘する中で、「それは中国に限らず、周辺諸国の傾向だ」としながらも、「中国は4年ごとに仏海軍の総トン数に匹敵する軍拡を続けてる。私には中国の目的が分からない」と言及した。フランスが安全保障の構成要素と考える「勢力均衡」「予測可能性」を中国は乱しているわけだ。

 仏海軍太平洋管区統合司令部は「衝突回避」のため、中国海軍に対し中枢レベルでの対話チャンネル構築を働きかけているが、中国側は乗ってこないようだ。


ゲスト / Guest

  • ジャン=マチュー・レイ / Jean-Mathieu Rey

    海軍少将 太平洋管区統合司令官兼仏領ポリネシア駐留仏軍司令官 / Contre-amiral, commandant interarmées de la zone Asie-Pacifique (ALPACI) et des Forces armées en Polynésie française (COMSUP FAPf)

  • アルノー・トランシャン / Arnaud Tranchant

    海軍大佐  ヘリコプター搭載型水陸両用艦「トネール」艦長 / Capitaine de vaisseau, commandant le Porte-hélicoptères amphibie (PHA) Tonnerre

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