会見リポート
2021年05月24日
16:30 〜 17:30
オンライン開催
総会記念講演会 唐鳳・台湾デジタル担当政務委員
会見メモ
※YouTubeの会見動画は全編英語、全編日本語のいずれかとなります。
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2016年5月に35歳で台湾の政務委員(無任所大臣に相当)に就任して以来、台湾のIT化を推進してきた唐鳳(オードリー・タン)さんがオンラインで登壇。台湾で再拡大する新型コロナウイルス感染症への対応、デジタル化と民主主義、デジタル化時代のジャーナリズムの役割などについての企画委員からの質問に答えた。
質問者
▽藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員長(日本経済新聞)
▽黒沢大陸 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
▽元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
▽播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)
通訳
宇尾眞理子 サイマル・インターナショナル
森岡幹予 サイマル・インターナショナル
会見リポート
デジタル革命、信頼が基盤/民主主義の深化とともに
沢村 亙 (朝日新聞社論説委員)
民主体制と強権体制のどちらがコロナに強靱か。前者代表として、とかく引き合いに出される台湾のキーパーソンである。
とはいえ、気がかりな最近の台湾での感染拡大から質疑はスタートした。昨年、マスクの在庫を一目で確認できるアプリの開発で名を上げた唐氏は、QRコードを使って簡単に居場所を登録できる接触確認ツールの実用化を紹介。市民が主体的にツール作りに参画したことで、使い勝手とプライバシー保護の二つの課題にも取り組めた――と胸を張った。
効率的で迅速な政策対応が求められる時代、政府のデジタル化は日本でも急務だ。だが唐氏が強調したのは「包摂性」。つまり、だれも置き去りにしないということ。「スマホを持っていなくても、鉛筆と紙で参加できる方策を残しておく」。より便利で安全な方法があると分かれば人々はついてくる。むしろ、彼らを支える仕組みが大切だという。
政府が独占するのでも主導するのでもない、市民社会が対等な関係で課題解決に加わる「オープンガバメント」への信念は、前政権の対中傾斜に抗議した2014年の「ひまわり学生運動」への参加体験にさかのぼる。当時、市民の不満の矛先は政策だけではない。「政府が市民を信用していないという現実に、みな怒っていたのです」
かつては政府が決めたアイデアをメディアなどを通して社会に示すのが常道だった。今では何百万の市民と意見交換できる双方向のプラットフォームがある。「議会が年間予算を決めるかわりに、市民が毎月の予算を立案したっていいのです」
技術革新を進めればいいという話ではない。市民から自由なアイデアを出してもらうには政府と市民の信頼関係が肝要だ。つまりデジタル化は民主主義の深化と裏表の関係ということ。「透明性を追求するジャーナリズムの役割も重要です」。投げかけられた言葉を重く受け止めた。
ゲスト / Guest
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唐鳳(オードリー・タン) / Audrey Tang
デジタル担当政務委員
研究テーマ:総会記念講演会