会見リポート
2021年06月14日
13:30 〜 14:30
オンライン開催
「新型コロナウイルス」(65) 福井トシ子・日本看護協会会長
会見メモ
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療提供体制が逼迫する中、看護師を取り巻く環境も厳しさを増している。
日本看護協会会長の福井トシ子さんが登壇し、看護現場の現状、コロナ禍で見えた課題、今後必要となる看護体制のあり方などについて話した。
司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
会見リポート
大きかった潜在看護職の力/平時も余裕ある配置が必要
小川 明 (共同通信社客員論説委員)
新型コロナウイルス感染症の流行に直面して医療の拡充の必要性が意識されるようになった。看護師らの役割の重要さも強く示した。日本看護協会を率いる福井トシ子さんは昨年4月に次ぐ2回目の登壇で看護体制の現状と課題を詳しく語った。
看護職の現状について「第4波で中等症・重症患者が増大し、終息が見通せずに心身ともに疲弊して、救える命も救えない喪失感がある」と危機感を表明した。保健所や施設、訪問看護の連携強化、看護職の量的確保、処遇改善、経営支援、メンタルヘルス体制などを課題に挙げた。当面の人材確保では、看護協会ナースセンターの呼び掛けで昨年4月~今年6月に潜在看護師5224人が就業した。「軽症者宿泊施設の運営に潜在看護職の力が大きかった」と述べた。さらに多くの潜在看護師がワクチン接種に関われるように、パートなどの多様な勤務形態を提言した。専門性が高い感染管理認定看護師ら約3千人の活躍も報告し、中小規模病院で少ない状況や地域偏在を指摘して、その養成と活用を求めた。
日本は病院の病床数が多いが、病床当たりの医師や看護師の数が不足している。コロナ患者への医療で、その惨状がより鮮明になった。1病床当たりの看護職員の配置数は0・9で、OECD加盟35カ国のうち30位にとどまる。この人数では「安全・安心な医療・看護の提供は難しい」と嘆いた。集中治療室(ICU)に配置される看護師も外国より少ない。特に人工呼吸器や人工心肺のECMOを装着した重症患者には手厚い看護師配置が必要になる。「平時から余裕のある看護職員の配置が必要」と訴えた。
揮ごうで「日本の看護は世界一」と書いた。コロナ医療の最前線を担う看護師たちが「疲弊しながらも前に進んでいることを承知していただきたい」と強調した。
ゲスト / Guest
-
福井トシ子 / Toshiko Fukui
公益社団法人日本看護協会会長 / President, Japanese Nursing Association
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:65