会見リポート
2021年05月18日
14:00 〜 15:30
オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(8) 杉山晋輔・前駐米大使
会見メモ
2018年1月から21年1月まで駐米大使を務めた杉山晋輔さんが登壇し、日米首脳会談の意味、今後の日米中関係のあり方などについて話した。
司会 西村陽一 日本記者クラブ企画委員長(朝日新聞)
会見リポート
対中責任分担へ国民的議論を
岸田 芳樹 (時事通信社解説委員)
バイデン米政権発足後、新型コロナウイルスワクチン接種が本格化し、景気も回復傾向にある。しかし、共和党内部では、トランプ前大統領を厳しく批判してきたチェイニー下院議員が党幹部職から解任されるなど、トランプ氏は依然、党内に絶大な影響力を堅持している。杉山晋輔前駐米大使は「トランプ氏が大統領選に挑戦する可能性は大きくないが、トランプ的なものは消えない」と断言する。
杉山氏は「トランプ氏はプアホワイト(白人貧困層)に目を向け、完全雇用を達成。全体を底上げしたから岩盤の4割の熱狂的支持者ができた。大統領が言ってはおしまいということを言ってパンドラの箱を開けた。米国が古き良きアメリカに戻ることはない」と述べた。
バイデン大統領の再選の可能性については、「客観的に多くの米国民、民主党の主要な人たちも2期目はないと考えている。1年半後の中間選挙で、共和党は下院を取り返すと確信している。1年半でバイデン氏はレームダック(死に体)になるかもしれない」と厳しい見方を示した。
4月の日米首脳会談について、「日本の総理だけ特例扱いでワシントンに迎えて2時間半会談し、極めて包括的で日米関係の土台となる文書が発表された」と評価。首脳会談成功の背景として、安倍晋三前首相とトランプ前大統領との親密な関係に代表される首脳間のきずな、長年にわたる産業界の努力、グラスルーツの友好を挙げた。
さらに重要な要因として強調したのが、「中国の今の在り方に対する高い問題意識」。バイデン政権は「国家安全保障戦略」の暫定指針で、「専制国家と民主国家の対立を今後の主たる問題とし、日本を含む同盟国との公平な責任の分担を明記している」と指摘。「直ちに台湾有事が起きる状況にはない」としながらも、中国の軍事的拡張は目に余るもので、米国が求める責任分担について、国民的議論が必要だと訴えた。
ゲスト / Guest
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杉山晋輔 / Shinsuke Sugiyama
前駐米大使 / former ambassador to USA
研究テーマ:バイデンのアメリカ
研究会回数:8