2021年05月17日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(7) 渡部悦和・元陸上自衛隊東部方面総監

会見メモ

元陸上自衛隊東部方面総監で、『米中戦争 そのとき日本は』(講談社現代新書、2016年)などの著書がある渡部悦和さんが登壇し、「米中覇権争いと日本の防衛」をテーマに話した。

司会 榊原智 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)


会見リポート

台湾有事は日本有事/中国、台湾侵攻は「混合戦」か

谷田 邦一 (朝日新聞大阪社会部記者(元編集委員))

 4月の日米首脳会談で台湾問題が共同声明に盛り込まれ、米軍高官らが露骨に台湾有事を口にし始めた。日本はバイデン政権の対中軍事戦略にどんな形で協力すべきか。

 「米中覇権争い」にまつわる著作を次々に出している自衛隊OBの渡部元陸将が、軍事面に絞った視点から歯切れよく持論を語った。

 現代中国の戦争の仕方は、あらゆる手段で制約なく戦う「超限戦」の発想に由来するという。

 AI(人工知能)を組み込んだ無人兵器や、衛星攻撃用のミサイル、核爆発による電磁波攻撃など中国がとり組む最新の兵器開発を紹介。台湾侵攻があるとすれば、軍事的手段のみならず情報戦やサイバー、宇宙まで利用したハイブリッド型の「混合戦」で臨むと分析した。

 「台湾有事は日本有事」と言い切る。米軍が介入すれば在日米軍基地が攻撃を受けるからだ。中国の国防費は「日本の5~7倍。自衛隊は勝ちようがない」。では日本は中国をどう抑止すればいいのか。

 渡部氏の結論は「自助として尖閣防衛は日本独自に守る努力をし、共助として日米同盟や多国間協力を活用する。全領域から攻めてくる中国に対処する体制作りをすべき」だ。

 バイデン政権が前政権から厳しい対中政策を引き継いだのは正しい選択だと評価する一方、日本の防衛力強化の努力は足りないと手厳しい。

 その足かせの要因を、日本の防衛政策の専守防衛にあるとして「自衛隊強化の大きなマイナスになっている」と踏み込んだ。

 最悪の事態を想定して考えるのは安全保障論の要諦だが、その議論には外交や経済、文化など幅広い視点が欠かせない。そもそも台湾への武力侵攻は本当に切迫しているのだろうか。

 専門家たちの間では、米軍が圧倒的な軍事的優位にあることや、米中が経済的な相互依存関係を分断してまで全面対決に至ることはないとの見解が少なくない。

 中国の軍事的脅威について学ぶ機会にはなったが、渡部氏の専門的見地から、どうすれば中国との衝突を回避できるかというひとひねりした知恵も聞きたかった。


ゲスト / Guest

  • 渡部悦和 / Yoshikazu Watanabe

    元陸上自衛隊東部方面総監

研究テーマ:バイデンのアメリカ

研究会回数:7

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