2021年05月27日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「官僚と政治」(1) 岡本全勝・元復興庁事務次官

会見メモ

総務省幹部による接待問題を機に、あらためて官僚と政治の関係、公務員のあり方が問われている。

「官僚と政治」と題し、官僚経験者に現状や課題を聞くシリーズの第一回ゲストとして元復興庁事務次官の岡本全勝さんが登壇、

自身の経験も踏まえ、「21世紀の官僚の役割」について話した。

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 


会見リポート

成熟社会の方向性提示を

倉重 篤郎 (毎日新聞社客員編集委員)

 岡本氏と言えば霞が関でも異能官僚の勇名をはせた人。自己体験を基に今の霞が関の何が問題か、どう立て直すか、熱論を展開してくれた。

 岡本氏によると、霞が関の本質的問題は、不祥事とか行政ミスの多発というより、時代と共に変化する社会の新しいニーズ、期待に官僚が応えきれず、官僚機構としての大きな方向性を見失ったことにある。

 原因は二つだ。一つは、欧米の先進諸制度を輸入・普及する明治以来のキャッチアップ型行政がすでに役目を終えたにも関わらず、成熟社会型行政へ転換し切れていないこと。

 もう一つは、この20年間模索してきた官僚主導から政治主導への転換が未だ道半ばであること。大臣と官僚、首相と大臣、与野党と官僚との関係が整理されず、政治家が官僚を使いこなす段階には至っていない。

 では霞が関はどう変わるべきか。まずは政策課題の整理が必要だ。成熟社会日本の課題とは何か。各省の事務次官、各局長は、今後3年から5年に取り組むべき中長期的課題と進むべき方向を提示、閣僚、与党と議論しておくことが望まれる。

 また、官僚は所管分野を守ることに汲々とするだけでなく、社会の幅広い課題を拾い上げ、対策を考え、解決する文化を作り上げることが肝要だ。その際には視点を生産者、供給者から生活者側に転換する。例えば、格差、孤立、貧困、ヤングケアラーら従来行政からは零れ落ちる人々を対象に一本化した支援窓口、「生活者省」を起ち上げてはどうか。

 政官関係は、政策の大小の分別が大事だとして、首相、閣僚、官僚が取り組む政策を切り分けること、また、全体としてどちらを向いているのか、首相と閣僚には政策体系と優先順位を明示するよう求め、マニフェストの復活も一案だとしている。

 説得力ある分析と提言だったが、官邸人事権に対する忖度問題についても老練な見立てを聞きたかった。


ゲスト / Guest

  • 岡本全勝 / Masakatsu Okamoto

    元復興庁事務次官

研究テーマ:官僚と政治

研究会回数:1

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