2021年05月12日 11:00 〜 12:30 オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(6) 河野克俊・前統合幕僚長

会見メモ

日米首脳会談の共同声明では安全保障に関し、日米同盟の強化が打ち出されるとともに、「台湾海峡の平和と安定」が明記された。

前統合幕僚長の河野克俊さんが登壇し、台湾海峡、沖縄・尖閣諸島をめぐる中国軍の動きなども踏まえ、米中対立下での日本の防衛のあり方などについて話した。

河野さんは、海上自衛隊出身。自衛艦隊司令官、海幕長を経て、2014年10月から2019年4月までの4年半にわたり統合幕僚長を務めた。

司会 榊原智 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)


会見リポート

台湾有事は日本も当事者/日米で中国抑止を

池内 新太郎 (日本経済新聞社論説委員兼編集委員)

 果たして「台湾有事」はあるのか――。今年3月の米上院公聴会で、インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)が6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性を示唆したのを機に、世界の目が台湾海峡に注がれている。河野克俊・前統合幕僚長の会見も、発言のほとんどが台湾や沖縄県の尖閣諸島をめぐる中国の出方と日米の対応に関するものだった。

 デービッドソン発言の「6年」の根拠はなにか。国家主席の任期(2期10年)を廃止した習近平氏は来年の共産党大会で3期目を狙うとみられている。その大義名分として中台統一を掲げるのではないか、というのが河野氏の見方だ。3期目の終わりが、いまから6年後になる。

 河野氏は中国にとって中台統一は建国時に果たせなかった「残された宿題」であり、「絶対に統一するという固い決意をもっていることを前提にしないといけない」と強調した。中国の理屈では尖閣はその「台湾省」の一部であり「台湾と尖閣は、隙あらば取る、という決意は揺るがない」と警鐘を鳴らす。

 仮に台湾有事となれば南西諸島も戦域の一部となる可能性が高く「日本は第三者ではありえない」。西太平洋の軍事バランスが中国の数的優位に傾くなか、外交手段だけで中国に翻意を促すのは難しい。河野氏は「力で現状変更することは高くつくと思わせる態勢をつくる」ことが必要だとして、日米で抑止力を強化する重要性を訴えた。

 河野氏は「平和的解決がベスト」と繰り返しながら、そこで思考停止に陥って最悪の事態を想定することを避けがちな日本の危機管理のあり方にクギを刺した。新型コロナへの政府の対応にも「ワクチン接種も平時の厚生行政として取り組んでいるが、国家安全保障の問題としてとらえないといけない。危機管理として失敗している」と厳しかった。


ゲスト / Guest

  • 河野克俊 / Katsutoshi Kawano

    前統合幕僚長 / former chief of staff, SDF

研究テーマ:バイデンのアメリカ

研究会回数:6

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