2021年04月22日 10:30 〜 12:00 10階ホール
「米軍基地問題に関する万国津梁会議」会見

会見メモ

写真左から柳澤協二氏、マイク望月氏、添谷芳秀氏、山本章子氏(発言順)。

 

沖縄県が設置する「米軍基地問題に関する万国津梁会議」は3月、同県の負担軽減にむけた提言書を玉城デニー知事に提出した。同会議が提言を出すのは、2019年3月に次いで2回目。今回の提言では台湾を巡る米中の対立が厳しさを増すなど、状況が変化していることを踏まえ、作成した。柳澤協二委員長が提言の概要を説明。マイク望月、添谷芳秀、山本章子の3委員はリモートで登壇し、それぞれの専門から提言の内容について補足説明した。

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 

令和2年度提言「新たな安全保障環境下における 沖縄の基地負担軽減に向けて」


会見リポート

「政府は寄り添う姿勢なくした」

稲葉 俊之 (共同通信社外信部)

 日米両政府が1996年に合意した米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還が実現していない。元内閣官房副長官補の柳澤協二氏は日本政府の対応について「実現しそうにない名護市辺野古への移転を『唯一の解決策』と言い続けることで、普天間の危険性を放置している」と非難した。

 返還合意当時、「日本政府には沖縄に寄り添う姿勢があった」と振り返る。しかし四半世紀が経過し「日米同盟への傾斜を強めていく中、寄り添う姿勢が全くなくなってしまった」と嘆いた。

 沖縄県が米軍基地縮小を検討するために設置した「万国津梁会議」の委員長として3月末に玉城デニー知事に手渡した提言書では、辺野古の工事は長期化する一方で「引き返せないほどには進んでいない」として計画中止を求めた。

 提言書をまとめた委員の一人、米ジョージ・ワシントン大のマイク・モチヅキ准教授は米中対立によって、米国の戦略に対する日本の影響力が高まっており、米側と沖縄の基地負担を議論する好機だと指摘した。

 「米ソ冷戦時代と異なり、中国との最前線にある日本の協力なしに米国は戦略を追求できない」と強調した上で「(沖縄の米軍基地について)日本政府に交渉の意思があれば、米国は応えなければいけないと思う」と明言した。

 別の委員、琉球大の山本章子准教授は、日米両政府が沖縄県外への米軍訓練の移転で合意しても、移転先で騒音や夜間の活動が問題となっていると報告。地元自治体は防衛省側と訓練に関する協定を結び「日本政府が責任を持って対応する」と明確にすることが重要だと訴えた。

 慶應大名誉教授の添谷芳秀委員は日米同盟に依拠した対中抑止論にとらわれ、沖縄の過剰な負担を正当化することで、日本政府は外交の幅を狭めていると懸念を示した。


ゲスト / Guest

  • 柳澤協二 / Kyoji Yanagisawa

    「米軍基地問題に関する万国津梁会議」委員長(元内閣官房副長官補)

  • 添谷芳秀 / Yoshihide Soeya

    「米軍基地問題に関する万国津梁会議」委員(慶応義塾大学名誉教授)

  • マイク望月 / Mochizuki Mike

    「米軍基地問題に関する万国津梁会議」委員(米ジョージワシントン大学准教授)

  • 山本章子 / Akiko Yamamoto

    「米軍基地問題に関する万国津梁会議」委員(琉球大学准教授)

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