2021年04月27日 14:00 〜 15:30 オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(4) 村山裕三・同志社大学大学院教授

会見メモ

バイデン米大統領は、半導体などの4分野で米独自のサプライチェーンの確立を大統領令で命じるなど、中国依存からの脱却を目指している。同志社大学大学院教授で経済安全保障を専門とする村山裕三さんが登壇し、「アメリカの経済安全保障政策:第2ステージに入った米中技術覇権争い」をテーマに、米国における経済安全保障政策の歴史やバイデン政権、中国の戦略について話した。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

経済安保、カギは米中重要分野での競争力保持

播摩 卓士 (TBSテレビ上席解説委員)

 「経済安保は2,3年前までは全く注目されない分野だったが、ここに来て風向きが大きく変わった」と村山さん自身が驚きを隠さないほど、米中対立と経済安保をめぐる動きは急だ。村山さんは、バイデン政権の登場によって、米中の経済安保をめぐる技術覇権競争は、感情的な対応で危機が叫ばれる第1ステージをすでに終え、問題解決・克服に向けた建設的対応が行われる第2ステージに入ったと位置付ける。

 その取り組みの第一が、アメリカ第一主義から同盟国重視政策への転換で、日本の輸出管理にも大きな変化が迫られるものの、そのこと自体は、悪い話ではないと評価する。その一方で、今回の米中対立が、究極的には国家理念の対立に根差しているものだけに、日本が理念対立の中で、どこまでアメリカと歩調を合わせられるか、微妙な側面もあると指摘した。

 すでに議論が始まった、半導体などサプライチェーンの見直しでは、日本企業がこれまで通り戦略製品を中国に輸出できず、市場の一部を失う恐れがある他、場合によっては、中国側が輸出管理に反発して報復措置に出る危険性もあると見通す。その一方で、日米協力によって、6G通信分野などで新たなビジネスチャンスも生まれるはずで、日本企業はそのチャンスを取り込むことが求められていると言う。サプライチェーンをめぐる交渉では、結局のところ、米中が決定的に重要だとみなす分野で、日本がどれだけ国際競争力を持っているかが鍵であり、半導体製造装置や部材に代表される「戦略的不可欠性」を維持、向上させることこそが、日本の政策の要になるべきだとの議論には納得させられた。

 かつて日本は、半導体摩擦でアメリカの経済安保の標的にされ、半導体協定というタガをはめられた末、日本の半導体産業は競争力を失っていった。今回、標的は異なるものの、経済安保を日本の競争力強化につなげられるか、したたかな対応が求められそうだ。


ゲスト / Guest

  • 村山裕三 / Yuzo Murayama

    同志社大学教授 / Professor, Doshisha University

研究テーマ:バイデンのアメリカ

研究会回数:4

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