2021年02月18日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「米政権交代とイラン・湾岸情勢の行方」齊藤貢・前駐イラン大使

会見メモ

長年日本の中東外交の現場に身を置き、去年10月まで駐イラン大使を務め、外務省を退官した齊藤貢氏が登壇。在任中の経験を踏まえ、政権交代後のアメリカとイランの対立の行方や複雑な湾岸情勢などについて分析した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

核問題で暫定合意のシナリオに言及

村山 祐介 (朝日新聞出身)

 バイデン米政権の発足で、崩壊の瀬戸際にあるイラン核合意はどうなるのか。昨年11月まで駐イラン大使を務めた齊藤貢氏は、存続には「暫定合意しかない」との見方を示した。

 会見は、米国が制裁を緩和しなければ、核合意に基づく抜き打ち査察を認めないとするイランの強硬な通告に懸念が広がる中で開かれた。

 齊藤氏はイランの状況について、制裁と新型コロナウイルスで「経済が持たない」窮状にあるとする一方、コロナ対策が急務のバイデン政権も「イランが暴れると内政に集中できない」と指摘。離任前にイラン政府要人と接した印象から、両国が水面下で交渉している可能性を指摘した。

 それを裏付けるように、会見の直後、米国がイランと関係国の協議に参加する意向を表明。イラン側も核関連施設への査察を最大3カ月間受け入れる姿勢を示すなど、対話に向けた地ならしがじわりと動き出した。

 ただ、双方の隔たりは大きい。

 齊藤氏は、米国の本音を「この機会に弾道ミサイル開発、地域情勢介入についてもイランの行動を制約したい」と読んだ上で、イランは「核問題以外は協議したくないし、そもそも米国を信用できない」とみる。落としどころとして、「米国がイランに一定量の石油輸出を認め、イランも核合意のかなりの部分の順守を再開することで手を打つ可能性がある」と暫定合意のシナリオに言及した。

 成否のカギを握るのは、6月に控えるイラン大統領選だ。保守強硬派が当選する確率が「かなり高い」とし、対話が行き詰まって「イランが挑発のレベルを高め、米国と衝突が起きる可能性が高い」と危惧する。

 中東地域が緊張すれば、ホルムズ海峡に原油輸入を依存する日本への影響も大きい。斎藤氏は安倍晋三前首相の2019年のイラン訪問に触れて「イランの日本に対する信頼は非常に高い」とし、英独仏などと連携した働きかけに期待感を示した。


ゲスト / Guest

  • 齊藤貢 / Mitsugu Saito

    前駐イラン大使 / former ambassador to Iran

研究テーマ:米政権交代とイラン・湾岸情勢の行方

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