会見リポート
2021年02月24日
15:00 〜 16:30
オンライン開催
「ミャンマー情勢」中西嘉宏・京都大学准教授
会見メモ
ミャンマーで2月1日、国軍によるクーデターが発生した。アウンサンスーチー国家顧問らが拘束され、国軍が統治体制を構築する一方、市民の抵抗は拡大している。経緯や今後の行方について、ミャンマーの軍と政治に詳しい中西嘉宏氏に聞いた。
司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
中西嘉宏氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科ウェブサイト)
近著『ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相』(2021年1月19日、中公新書)
※事態が流動的なことから、2021年3月3日(水)をもって会見動画の公開を停止しました。
会見リポート
「手打ち」破綻でクーデターか
真田 正明 (朝日新聞社論説委員)
2月1日朝、クーデターの第一報は、たまたまつけたBBC放送で知ったそうだ。その時、軍政時代のニュースを再放送しているのかと思った、という。まさに歴史の針を巻き戻すような事態がミャンマーで起きている。
昨年の選挙で国民民主連盟(NLD)が大勝したが、それは予想の範囲内。アウンサンスーチー政権も2期目である。一方の国軍は、2008年憲法による特権的地位を維持している。そんな情勢から、専門家でも国軍の暴走を予想する人は少なかったという。
では、この事態が起きたのはなぜか。それは国軍とスーチー氏との間の「手打ち」が破綻したからだとみる。
独立運動の歴史から、ミャンマー国軍はもともと政治への関与をためらわない。東南アジアの他国と比べても、極めて大きな存在感を示してきた。一方でスーチー氏は、民主化のシンボルとして長年の自宅軟禁に耐えてきた。
その構図が11年の民政移管で変わった。米国からの制裁解除を目指す当時のテインセイン政権は、スーチー氏らの政治活動を認める。その代わりにスーチー氏らは、国軍に有利な憲法を認める。それが12年の「手打ち」だったという。自由で公正な選挙で選ばれた文民政権と、政権から統制を受けない国軍が共存するという微妙なバランスだ。
それが崩れ、NLDを手のひらに収めきれなくなった国軍が力での権力奪取に走った、というのが今回の構図だ。
今後、再度の民政移管プロセスがありうるのか、昔のような徹底的な弾圧に向かうのか、中西氏にも読めないという。
ただかつてと違うのは、通信技術の発達によって、市民の抵抗する姿が即時に国外に伝わることだ。ミャンマーを注視し、関与を続けることで、民主主義を取り戻すことができるか、国際社会にとっても正念場だ。
ゲスト / Guest
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中西嘉宏 / Yoshihiro Nakanishi
京都大学東南アジア地域研究研究所准教授、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授 / Associate Professor, Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University / Associate Professor, Graduate School of Asian and African Area Studies, Kyoto University
研究テーマ:ミャンマー情勢