2021年02月25日 15:00 〜 16:00 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(56) 大坪毅人・聖マリアンナ医科大学病院長

会見メモ

聖マリアンナ医科大学は1月18日、感染者の後遺症に特化した「感染症後外来」を開設した。

大坪毅人病院長は会見で、専門的な治療設備がある大病院だからこそできると「感染症外来」を開設に至った経緯を説明した上で、この間の外来診療から見えてきたことなどについて話した。

司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員(共同通信客員論説委員)


会見リポート

コロナ「感染後外来」を開設

小嶋 修一 (TBSテレビ特別解説委員)

 〝群盲象を評す〟とのたとえを引用し、大学病院ならではの充実した、12の診療科で新型コロナ後遺症の克服に挑む「感染症後外来」。開設のきっかけは和歌山県が去年11月に発表した、患者の後遺症に関する調査結果だった。感染者が退院後、倦怠感や呼吸困難感、脱毛等の症状を訴えるケースが5割に迫っていた。この中には、無症状や軽症の若者も少なからず含まれていた。「大学病院だからできることで、困った患者を助けたい」と、それから年末年始をはさんで、わずか2カ月足らずで各診療科を説得し、外来オープンにまでこぎ着けた。そのけん引役がこの日の主人公。スタッフ間との良好なコミュニケーションを図ろうと、院長室のドアはいつも開けっ放しだという大坪氏だからできた離れ業だろう。

 後遺症か否かは見極めが難しい。だからこそ、不安に思う患者をどんどんと受け入れたい。さらに外来の名称も、差別や偏見を生んだ「後遺症」という用語はあえて使わず「感染症後外来」と、知恵を絞った。〝愛ある医療〟をミッションとする大坪氏らしい発想の数々だ。

 倦怠感や呼吸困難感、頭痛等、新型コロナの後遺症は、〝気のせい〟だとも見られがちだ。だからこそ、大学病院の各診療科の専門医が様々な検査を駆使することで、後遺症かどうかを客観的に判断することが求められているとする。現時点では、後遺症のメカニズムも解明されていないが、専門医の知見を結集して、治療に漢方を取り入れたり、精神科の様々な職種を総動員したりして、それぞれの患者に一番合った治療を模索する毎日だ。その成果を問われ、「(感染症後外来では)患者の多くは時間の経過とともに良くなってきている」という嬉しい報告もあった。

 今後は、同様な特別外来を開いた岡山大学病院などとネットワークを作り、情報を共有して、後遺症の原因究明や治療法確立に努めたいと強調した。


ゲスト / Guest

  • 大坪毅人 / Takehito Otsubo

    日本 / Japan

    聖マリアンナ医科大学病院長

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:56

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