2021年02月26日 13:30 〜 14:30 オンライン開催
「オンライン海賊版の猛威 ー 改正著作権法施行と国際的な課題」弁護士 福井健策氏、伊東敦・集英社編集総務部部長代理

会見メモ

漫画などオンライン海賊版へのアクセスが、史上最悪なペースで激増している。

今年1月にはインターネット上の海賊版対策を強化する改正著作権法が施行されたが、その効果については限定的との指摘もある。

著作権、知的財産に詳しい、弁護士の福井健策氏と一般社団法人ABJ広報部会長の伊東敦・集英社編集総務部部長代理が登壇し、ネット上の海賊版被害の実態、改正法の内容や今後の対策のあり方について話した。

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事兼事務局長

写真左から福井健策氏、伊東敦氏。

 

※ゲストの意向により動画の画像の一部を加工処理しています。ご了承ください。


会見リポート

悪質業者と「いたちごっこ」続く

下山 純 (共同通信社編集委員)

 「漫画村」をきっかけに2018年に社会問題化した漫画の海賊版サイトはアクセスが増え続け、最悪の状況に陥っている。

 一般社団法人ABJ広報部会長の伊東敦氏の説明では、漫画村は閉鎖されたが現在も約700のサイトが活動。今年1月の上位10サイトの月間アクセス総数は約2億3千万件に達した。伊東氏が所属する集英社は、海賊版サイトや検索エンジン、SNSなどに月間最大12万件の削除要請を実施しているという。

 海賊版サイトは、漫画のファイルをサイトから直接ダウンロードできる「オンライン型」と、別のサーバーにアップロードされたファイルのリンク(URL)を表示する「リーチサイト型」に分かれる。

 福井健策弁護士は著作権法の改正を解説。昨年10月から新たにリーチサイト型についてリンク提供者やサイト運営者らが一定の要件下で民事、刑事の責任を問われることになった。今年1月からは従来の音楽・映像に続き、海賊版と知りながら漫画などをダウンロードした場合も一定の要件下で私的利用でも違法となり、刑事罰の対象にもなり得る。

 規制強化に加え、出版業界と通信・IT業界との連携も進み、訴訟などの司法手続きや収入源となる広告出稿の抑制、「STOP!海賊版」キャンペーンを展開している。

 しかし、海賊版サイトはドメインやサーバーを頻繁に変更し「いたちごっこ」の様相を呈する。悪質な事業者のほとんどはベトナムなど海外とみられ、相手国政府や海外のドメイン統括団体などに協力要請する対策の成否が鍵を握るという。

 伊東氏は集英社の人気漫画『SLAM DUNK』にちなみ「諦めたらそこで試合終了ですよ」、福井氏は「最強の武器は作品を愛する人々の協力です」とメッセージを残した。改正著作権法を駆使し、海賊版サイトを追い詰める戦いは続く。


ゲスト / Guest

  • 福井健策

    弁護士

  • 伊東敦

    一般社団法人ABJ広報部会長/集英社編集総務部部長代理

研究テーマ:オンライン海賊版の猛威 ー 改正著作権法施行と国際的な課題

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