2021年02月16日 15:00 〜 16:30 オンライン開催
著者と語る『知事の真贋』片山善博・早稲田大学大学院教授

会見メモ

片山善博氏は本書『知事の真贋』(文春新書、2020年11月)で、昨年春の新型コロナウイルスの感染拡大「第1波」における休校要請や自粛要請などには法的根拠がない、または法律を誤って解釈した違法なものがあったと指摘している。

片山氏がリモートで会見し、特措法、感染症法の改正も踏まえ、コロナ禍における知事の役割などについて話した。

司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

法治国家軽視、メディアに苦言も

小林 伸年 (時事通信社解説委員長)

 『知事の真贋』を書いた元鳥取県知事であり元総務相の片山善博教授が登壇した。冒頭、片山教授が「マスコミにも耳の痛いことを言う」と宣言した通り手厳しい批判の連続だった。ただ、だからこそ目の覚める思いがした。首相といえども法律に基づかず私権の制限はできないという法治国家として当たり前の原理を思い出させてくれたからだ。

 片山氏によると、新型コロナウイルスの感染対策をめぐって、国と都道府県が法律や条例に基づかない指示や要請を繰り出したとし、「国会も地方議会も監視機能を果たしておらず、マスコミも怠っていた。法治国家が傷んでいる」と強い懸念を表明した。

 片山教授が特に問題視したのは、国が新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定を勝手に解釈して、国が緊急事態宣言を発出するか否かにかかわらず、地方はいつでも外出自粛や営業自粛を要請できるとしたことだ。要請に従わないパチンコ店名公表を例に、同法にはだれかを見せしめにする規定はなく、あるのは知事の暴走を防ぐ観点から、どんな施策を講じたかの情報公開の義務付けなのだという。

 誤った法解釈がまかり通ったことについて、片山教授は「国に悪気がないだけに始末が悪い。真の意味を考えず、自分たちの権力行使の手段と理解してしまう思考パターンが恐い」と指摘した。そうした国と地方自治体が打ち出した施策に対して科学的根拠を問う報道はあったが、法的根拠に疑問を投げかけたマスコミはなかったという。

 今回のようなパンデミックは国、地方だけでなく、報道機関にとっても事実上初めての経験だ。だからといって、為政者の言動を鵜呑みにすることが許されないのは自明の理である。

 「しっかり監視せよ。権力は腐敗する」―。片山教授のメッセージを改めて胸に刻んでおきたい。


ゲスト / Guest

  • 片山善博 / Yoshihiro Katayama

    日本 / Japan

    早稲田大学大学院教授 / professor, graduate school of political science, Waseda University

研究テーマ:『知事の真贋』

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