2021年03月15日 13:30 〜 15:00 オンライン開催
「2040年の社会保障の姿を考える」香取照幸・上智大学総合人間科学部教授/一般社団法人未来研究所臥龍代表理事

会見メモ

介護保険制度創設の立役者の一人であり、長年社会保障制度改正に取り組んできた元厚生労働官僚の香取照幸・上智大学総合人間科学部教授が登壇し、社会保障制度の現状と課題、目指すべき制度のあり方などについて話した。

 司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

 香取照幸氏(上智大学HP)

一般社団法人未来研究所臥龍 

 


会見リポート

社会保障は自己実現を後押し

鈴木 穣 (東京新聞論説委員)

 厚生労働省の官僚として介護保険制度をはじめさまざまな社会保障制度づくりを担った香取氏の指摘は、難解な制度をどう理解すればいいのか示唆に富んだ。

 年金、医療、介護、子育て支援、雇用など個々の制度を理解するためには、まず「社会保障とは何か」という定義の共有が大切だ。その説明は明快だった。

 個々人が自己実現でき能力を発揮することで社会に活力が生まれ社会が発展する。社会保障はその時に生まれるさまざまなリスクをヘッジし社会の安定を支えるためのもの。

 言い換えると、セーフティーネットは人が落ちた時の安全網というだけではなく、落ちることへの不安を取り除き「思い切って飛ぶため」に不可欠なシステムだと説明した。

 思い切って飛べれば社会に活力が生まれ経済にも好影響がある。

 その意味で、社会保障政策と経済政策の課題は「表裏一体」との指摘にうなずいた。

 ところが今、社会保障は「機能不全を起こし格差や貧困が拡大している」と言う。それは社会の支え手である中間層を崩壊させている。格差・貧困の拡大は社会の分断と社会不安を増大させ、支え合いである社会保障の機能を低下させ、それがさらに格差を広げる。経済成長にも悪い影響を与える。この循環に陥っていると指摘する。

 格差・貧困の解消へ「一番目に見える課題は非正規労働者の問題」と指摘した。社会保障政策では既にこの問題は認識されている。香取氏も公的年金制度を例に非正規雇用への適用拡大の必要性を説いた。

 雇用政策と連携した社会保障政策の必要性も力説した。「非正規は安定的な雇用が確保されてなく職業訓練の機会もなく、能力を生かし切れていない」との指摘は的を射ていた。社会保障を機能させるための課題をあらためて認識した。


ゲスト / Guest

  • 香取照幸 / Teruyuki Katori

    上智大学総合人間科学部社会福祉学科教授/一般社団法人未来研究所臥龍代表理事 / professor, Sophia University/ chair of the board, Future Institute wolong

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