2021年02月17日 15:00 〜 16:30 オンライン開催
「3.11から10年」五百旗頭真・ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長

会見メモ

東日本大震災発災後、内閣府復興構想会議議長、復興庁復興推進委員会委員長を務めた五百旗頭真氏が登壇。

阪神・淡路大震災からこれまでの震災復興の流れを振り返りながら、東日本大震災から10年を迎える被災地の現状、復興政策がもたらした課題などについて話した。

東日本大震災では、復興予算を100%国が負担した。五百旗頭氏は「0.1%でも地元負担を持たせないとモラルハザードがなくなる」と国に意見したと振り返った上で、「(震災から10年を迎える)いまモラルハザードを起こしているのかの判断は難しいが、地元負担が少しでもあったなら、丘の上の町に多くの空き地が見られることもなかったのではないか」と話した。

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

「創造的復興」による功罪

関谷 俊介 (毎日新聞社社会部)

 東日本大震災から10年を迎える被災地の復興について、政府の復興構想会議で議長を務めた経験を踏まえ、「津波に対して安全度の高いまちができた」と強調する一方、完成までに時間がかかったことから「空き地だらけになり、コストも大きかった」と指摘した。

 1995年の阪神・淡路大震災以降、「忘れるいとまもないくらい」地震が続き、風水害も相次いだことから、平成の30年を「大災害の時代だった」と総括。その上で、阪神・淡路大震災では約140万人のボランティアが活動し、その後も災害が起きるたびに「支援を受けたところが次の災害で支援する循環が生まれた」と評価した。

 そんな中、発生した東日本大震災では、発生から1カ月後に設置された復興構想会議で「創造的復興」について議論。「キーポイントは津波常襲地の三陸海岸に安全度の高いまちを造ることだった」と言い、高台移転や減災手段を組み合わせる多重防御を提言した。だが、その後に復興事業を100%国費で賄うことが決まり、「まったく地元負担がないと何でも国にやってもらうことになり、モラルハザードが起こる。0・1%でも地元負担があった方がいいのではないか」と国側に意見したという。

 被災地の現状をどうみているのか。丘の上に新たなまちを造ることに比べて完成までに時間がかからなかった多重防御のまちも少子高齢化の中で産業が育ちにくく人口が減少しているとして、「どちらが正解でどちらが間違っているかではなく、どちらにも功罪ある」との見方を示した。

 災害を経験する過程で「苦しい時に支え合う国民協働的な流れができた」と言い、新型コロナウイルス禍における国際協調の大切さを説いた。そして、最後に「一緒に支えていくという流れを評価することが、震災10年を迎えたわれわれの課題ではないか」と投げかけた。


ゲスト / Guest

  • 五百旗頭真 / Makoto Iokibe

    日本 / Japan

    公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長 / President, Hyogo Earthquake Memorial 21st Century Research Institute

研究テーマ:3.11から10年

研究会回数:9

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