2021年01月21日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「コロナ禍で急増する女性の『実質的失業』と孤立」梅屋真一郎・野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長、武田佳奈・同センター未来価値研究室上級コンサルタント

会見メモ

野村総合研究所が昨年12月に、パート・アルバイトで働く女性を対象に行った大規模な雇用調査の結果、コロナ禍で勤務時間が減るなどし、収入が大幅に減少したものの、「失業手当」も「休業手当」もなく公的な支援を受けられずに生活が困窮する「実質的失業者」が急増していることがわかった。

調査を担当した野村総研未来総発センターの梅屋真一郎・制度戦略研究室長と武田佳奈上級コンサルタントが登壇し、「実質的失業者」の背景、求められる対策について話した。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

見えにくい「失業者」への支援拡充を

谷本 仁美 (毎日新聞社くらし医療部)

 野村総研未来創発センターが昨年12月に全国のパート・アルバイト就業女性(20~59歳)約5万6000人を対象にした調査から、新型コロナ感染拡大の影響が明らかになった。4人に1人のシフトが減少し、うち4割はコロナ前より5割以上減った。シフト5割以上減で、かつ休業手当等の支給を受けていない人が7割おり、これらを「実質的失業者」と定義。試算したところ約90万人に上るという。統計上は就業者とされている見えにくい存在に光を当てた。

 さらに、シフト減だけでも支給対象となる休業手当などの支援制度を知らない人は6割に上る。8割近くで世帯収入が減り、貯蓄を切り崩すなど困窮しているにも関わらず、支援につながらずに社会から孤立しており、支援策の周知徹底や専用相談窓口の設置、さらなる経済支援策の検討が提案された。

 困窮は精神面にも影響を及ぼしている。実質的失業者の7割が「経済状況を理由に気持ちが落ち込むことが増えた」と答えた。これは昨年の自殺者が11年ぶりに増え、特に女性の増加率の伸びたことを想起させる。梅屋氏は今後、詳細を分析するとした上で、「何らかの関連がある」と推測した。

 一方、シフト減を含む休業中のパート・アルバイト女性の約6割が人手不足の業界への転職に意欲を見せていることもわかった。武田氏は「他職場での就業再開支援は長期的に日本の労働力不足にも役立つ」と指摘した。

 ほかに「パート・アルバイト」には家計の補助的なものという固定観念があるが、シフト減パート・アルバイト女性の4割は配偶者がいない。そのうち、ひとり親世帯でもなく、不安定な雇用の元で単身、生活を維持してきた40、50代層も一定数みられた。世帯構造の基本形が変化している可能性があるという。

 梅屋氏は「格差を埋めないとこの社会は持たない。非正規雇用の人も安心して暮らせるセーフティーネットが必要だ」と結んだ。

 


ゲスト / Guest

  • 梅屋真一郎

    野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長

  • 武田佳奈

    野村総合研究所未来創発センター未来価値研究室上級コンサルタント

研究テーマ:コロナ禍で急増する女性の『実質的失業』と孤立

ページのTOPへ