2021年02月17日 13:00 〜 14:00 オンライン開催
「3.11から10年」 内堀雅雄・福島県知事

会見メモ

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から10年を前に、福島県の内堀雅雄知事がリモートで会見した。

内堀知事は、津波、地震、原子力災害、風評被害と複合的な災害に見舞われた県の今を、「光」、「影」、そして「挑戦」という3つのキーワードを用い話した。「光」として、避難指示区域を除き、面的除染は完了し、県の面積に占める避難区域は10 年前の12%から2.4%に縮小した点を説明。一方の「影」では、福島第一原発の廃炉は「まだまだこれから」の段階にあり、原発周辺町村の帰還率は1割に満たない地域が多いなど、困難な課題を抱え続けているとした。

内堀知事は、「光をより明るく、影を光に変えたい。『挑戦』を続ければ克服できると信じている」とし、具体例として「福島イノベーション・コースト構想」におけるロボットのテストフィールド、水素エネルギー研究フィールドなどを挙げた。

司会 磯崎由美 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

復興の「光と影」を淡々と

坪井 ゆづる (企画委員 朝日新聞社論説委員)

 あの日から10年後の未来に立つ知事として、前を向く姿勢を強調する63分間だった。

 「未来を拓く」キーワードとして「光と影」「挑戦」の二つを掲げ、現状と課題を淡々と語った。

 復興が前に進んだ「光」は、面的な除染がすすみ、県内の空間放射線量は外国の主要都市とほぼ同水準であることや、県土の約12%あった避難指示区域は2・4%まで減っている事実を指摘した。

 玄米は5年、野菜・フルーツは7年、キノコや畜産物は8年続けて放射性物質が基準値を超えず、すでに学校給食の食材は44%以上が地元産である点や、常磐自動車道、JR常磐線の全線開通なども挙げた。

 「挑戦」では、県産農産物の輸出量が過去最多になったことを、桃や米、梨を実例に紹介した。

 そして、被災地で展開されている「イノベーションコースト構想」や「水素エネルギー研究」「ロボットテストフィールド」なども説明し、「この賑わい、活力が傷ついた地域の未来に向けた再生の大きな力になっている」と述べた。

 だが、こうした明るい話題の合間に挟んだ「影」は「廃炉が終わるまで、県は常に影を抱え続ける」という言葉通りの重々しさだった。

 帰還が認められた沿岸自治体の居住率が上がらない実情や、農産物価格の低迷を率直に語った。

 その後の質疑も、言葉の端々から厳しさが伝わってきた。

 たとえば、復興拠点以外の避難指示区域の全体像が示されない現状については、「できるだけ早く示していただきたい」と、国に要請するしかない立場がにじんだ。

 さらに言えば、中間貯蔵施設の汚染土を2045年3月までに県外へ搬出できるのか。すでに工程の遅れも目立つ廃炉作業で、燃料デブリ取り出しの難作業を完遂できるのか。

 ともに国の対応しだいで地元が翻弄される可能性が大きい。そんな逃れられない現実を背負う姿が画面の向こうにあった。


ゲスト / Guest

  • 内堀雅雄 / Masao Uchibori

    福島県知事 / Governor, Fukushima

研究テーマ:3.11から10年

研究会回数:8

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