2020年12月18日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「揺れるタイ 反政府デモの行方は」浅見靖仁・法政大学教授

会見メモ

タイで続く反政府デモでは従来タブー視されてきた王室批判も出るなど、これまでとは異なる動きを見せている。タイの社会・政治に詳しい浅見靖仁教授に現状や今後の見通しを聞いた。

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

 

※本会見の動画は公開しません。


会見リポート

王政改革、前国王にも批判が

岡部 哲雄 (時事通信社社会部長)

 10年以上にわたり、攻守所を変えながら反政府デモが繰り返されたタイ。これまでは、政権を追われた側が首都バンコクの繁華街や空港などの主要施設を占拠して相手陣営に対する批判を展開してきたが、今回は様相が大きく異なる。法政大の浅見靖仁教授は、運動の中心が学生であり、タイではタブーとされてきた王政改革にまで踏み込んでいる点が特徴だと指摘する。

 タイでは2006年のクーデターで失脚したタクシン元首相を軸に、支持派と反対派が互いの政権を批判する形で争ってきた。しかし、対立が先鋭化することはあっても、「政権争い」の域は出なかった。

 浅見教授は現在の反政府運動が「プラユット首相辞任」「新憲法制定」に加え、「王政改革」を要求していると説明。タイには不敬罪があるだけでなく、王室の在り方に関する議論自体がタブー視されていた。さまざまな「奇行」が伝えられ、ドイツでぜいたくな暮らしを続けるワチラロンコン国王に対する不満がこうした要求につながったとの見方もあるが、浅見教授は「それだけではない」と語る。批判の矛先は、国民に敬愛されてきたはずの故プミポン前国王にも向けられているのだ。

 運動の始まりは、14年5月のクーデターにさかのぼる。首謀者で現在も政権に居座るプラユット首相に対する批判は、これまで繰り返されたクーデターを承認してきたプミポン前国王の責任を問う声へと高まった。運動の中心が「Z世代」と呼ばれる1997年以降に生まれた若者たちで、前国王が国をまとめてきたという実感に乏しいことも影響したと分析する。

 運動はあくまで「王政改革」であり、王政の打倒ではない。それでも、実現には大きな壁があり、妥協点を見いだすのは困難だ。浅見教授は今後、経済の停滞がさらなる政治混乱を招く可能性もあると警告した。


ゲスト / Guest

  • 浅見靖仁 / Yasuhito Asami

    法政大学法学部国際政治学科教授 / Professor, Hosei University

研究テーマ:揺れるタイ 反政府デモの行方は

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