2020年12月22日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「新型コロナウイルス」(54) ワクチン開発の現状② 石井健・東京大学医科学研究所教授

会見メモ

米ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が今月8日、イギリスで始まった。ワクチン開発の現状や運用の在り方などについて石井健教授に聞いた。

司会 村山知博 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

日本ブランドでワクチン輸出国目指せ

村川 実由紀 (共同通信社科学部)

 新型コロナウイルス感染症のワクチン競争では米ファイザー社がいち早く欧米での実用化にこぎ着け“勝者”となった。初めて実用化されたメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンだが、こうした核酸を使うタイプの長所に東京大学医科学研究所の石井健教授は約20年前から気付き、研究を続けてきた。現在も国内メーカーの第一三共と新型コロナのワクチン開発計画を進行中だ。

 以前からある生ワクチンや不活化ワクチンとは効き方が異なる。油の膜に包んだmRNAを筋肉注射する。人の細胞に取り込まれてタンパク質が作られ、抗体など免疫が誘導される。

 核酸ワクチンは生産速度には秀でているが、人への接種は初めてで安全性の保証はない。ただ、「それほど重篤な副作用はmRNAワクチン特異的には起こらないだろう」とする。

 かつて石井教授は中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発プロジェクトを進めていた。ただ予算がカットされ凍結。新型コロナが発生したことで再びワクチン開発に関わることになった。

 これまでに動物実験が終わり、手応えを感じている。ただ国産のワクチンの実用化は先行する輸入ワクチンから少なくとも1年のタイムラグが出ると見通している。周回遅れとも揶揄されるが、日本製には安心安全というブランド力があるのでニーズはあり、無駄ではないと考えている。ワクチンを外交の武器にしている国を例に挙げ、「まだチャンスはなくなっていない。日本はワクチン輸出国を目指すべきだ」と呼び掛ける。

 今後複数のワクチンが流通する可能性があり、正確な情報を判断する教育が必要と説く。また、患者の明らかな減少などワクチンの効果を実感できるまでは最低でも4、5年はかかり、接種開始後すぐに「今の生活スタイルがなくなるとは考えづらい」との見方を示した。


ゲスト / Guest

  • 石井健 / Ken Ishii

    東京大学 医科学研究所 感染・免疫部門 ワクチン科学分野 教授 / professor, Division of Vaccine Science, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:54

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