2020年12月21日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(53) ワクチン開発の現状① 長谷川秀樹・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長

会見メモ

米ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が今月8日、イギリスで始まった。ワクチン開発の現状と背景などについて、自身も開発に取り組む長谷川秀樹氏に聞いた。

司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員(共同通信)

 

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会見リポート

適切に理解して接種へ準備を

小川 明 (共同通信社客員論説委員)

 新型コロナウイルスが出現して1年が経過、拡大が止まらない。この段階でワクチン開発が早く進み、接種がすぐ始まった。これも史上初めてだ。流行の将来を左右するワクチンについて、国立感染症研究所でワクチン開発に関わる長谷川秀樹さんが解説した。

 コロナウイルス粒子から突き出たスパイクがワクチンの標的タンパク質になる。ワクチンは核酸、ウイルスベクター、不活化、弱毒生、組み替えタンパク質の5種類がある。課題として、類似のコロナウイルスのワクチンや動物モデルが存在しないこと、安全面での最大限の注意、短期間で大量に安価な供給などを挙げた。

 感染研は有効性を分析する抗体測定法、感染する動物モデルのマウスを確立した。さらに長谷川さんらは昆虫細胞のタンパク質合成系を使ってワクチン候補の免疫抗原を作り、塩野義製薬が12月から国内で臨床試験を始めた。

 世界で先行するのは全く新しい核酸のメッセンジャー(m)RNAワクチン。不安定で壊れやすいmRNAを脂質ナノ粒子に包んでカプセル化する新技術がここ数年急発展した時に今回のパンデミックが起きた。米ファイザー・独ビオンテックと米モデルナがそれぞれ開発し、欧米で緊急使用が12月に許可された。

 日本でもファイザーが承認を申請しており、早ければ2月から接種が可能になる。治験で効果は1回目の接種から10日以降に現れ、95%と極めて高いが、接種開始後に重いアナフィラキシーショックも一部に出た。「治験データは接種後3カ月までで、長期の影響は分かっていない」という。

 長谷川さんは「欧米ではあくまで緊急使用許可であり、正式承認ではない。日本は数カ月遅れる分、外国の市販後調査の結果を参考にできる。副反応の頻度も含め、適切に理解して接種に向けた準備をすべきだ」と提言した。


ゲスト / Guest

  • 長谷川秀樹 / Hideki Hasegawa

    国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター長 / director, Influenza Virus Research Center, National Institute of Infection Diseases

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:53

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