2020年12月11日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「デジタル庁とマイナンバー」(6) 手塚悟・慶應義塾大学教授

会見メモ

マイナンバーを活用した公的個人認証の専門家である手塚悟・慶應義塾大学教授にマイナンバーのポテンシャルや、データ全般のセキュリティー確保と欧米のシステムとの調和の重要性などについて聞いた。

「情報セキュリティの基礎」(共立出版、2011年)「マイナンバーで広がる電子署名・認証サービス」(日経BP、2015年)など多数の著書がある。

司会 藤井一明 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

 


会見リポート

データ保護する「トラストサービス」強化を

橋詰 悦荘 (時事通信社解説委員)

 「国境のないサイバー空間は相互信頼のない、ゼロトラストの世界。性善説で考えてはだめ」。システムサイドからマイナンバーの構築を担ってきた慶應大学環境情報学部の手塚悟教授は、こう力説した。   

 冒頭、手塚教授は2012年にデンマークとスウェーデンのキヨスクで買い物をした際の法人番号が記載されたレシートを提示。「すぐに税務署に飛び、売り上げが累積されていく。会計部門がシンプルになる」と説明。日本でのインボイス(適格請求書)導入は23年から。10年以上の遅れは歴然だ。法人番号と個人番号という違いはあるが、「マイナンバーを生かすも殺すも国民次第」と言う。

 書面は電子文書に、対面は電子認証で、押印は電子署名で、それぞれ代替されることが可能になった。そして、行政のデジタル化という政策目標が一番高く掲げられた。「ハンコ」という日本社会の岩盤にようやく穴が開いたようにみえる。次の問題は、ハッカーの存在に代表される無法地帯と化したサイバー空間に、安心安全なデータ交換ができる信頼の基盤をどうつくるかだ。ネット上で改ざんや成り済ましなどを防止する仕組み「トラストサービス」を実現することだ。

 米国は安全保障分野で、EUは社会保障分野でトラストサービスを展開している。「自由と信頼のルールに基づくデータ流通圏と国際相互連携」の実現に向けて、日本は米国、EUと既に国際協定をそれぞれ締結。連携の枠組みは整ったようにみえる。

 しかし、日本の制度不備は明らかだ。手塚教授は「トラストサービスの国際連携を実現するためには、国としての監督機関と、その下に技術標準機関が必要」と指摘。監督機関としてデジタル庁が設置される方向性は出た。「トラスト基本法の制定と、法制度とデジタルシステムを結びつける国家技術標準局(仮称)の設置」を提起した。


ゲスト / Guest

  • 手塚悟 / Satoru Tezuka

    日本 / Japan

    慶應義塾大学環境情報学部教授 / professor, Faculty of Environment and Information Studies, Keio University

研究テーマ:デジタル庁とマイナンバー

研究会回数:6

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