会見リポート
2020年12月17日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「デジタル庁とマイナンバー」(7) 森信茂樹・東京財団政策研究所研究主幹
会見メモ
財務省出身で、現在官邸の「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」の構成員を務める森信茂樹氏に、マイナンバーの制度課題、デジタル・セーフティーネットの構築などについて聞いた。
司会 藤井一明 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
マイナンバーで「デジタルセーフティーネット」を
竹田 忠 (企画委員 NHK解説委員)
5年前のマイナンバー開始時の連続会見に続いて、ただ一人今回も再登壇いただいた。
菅政権の看板政策として、デジタル化とマイナンバー推進が強力に進められているが、森信氏によればデジタル化は「手段」、マイナンバーは「ツール」。これでどのような政策を行うかが重要だと指摘。その新たな政策として自らの命名による「デジタルセーフティーネット」が必要だと説く。
日本型雇用の変容と働き方の多様化で、雇われない働き方=フリーランスが増えている。課題はコロナ禍で顕在化したように収入が不安定なことと、そうした収入の状況を証明しにくいこと(持続化給付金を巡って、フリーランスの不正受給が問題となったが、こうしたことが〝悪用〟を許す背景になっている)。また発注元との契約内容が曖昧だったり、契約文書が存在しないことも多く、トラブル多発の原因となっている。
マイナンバー制度の大きな柱であるマイナポータルが「デジタルセーフティーネット」としてここで大きな役割を果たすと森信氏は指摘する。マイナポータルは、カードを使ってアクセスするオンライン行政サービス。番号制度の後発組である日本が「2周遅れでトップランナー」になったと森信氏が表現する日本独自の仕組みだ。発注元やプラットフォーマーが、フリーランスに発注したり、仕事を仲介する場合は契約文書や報酬などのカネの流れを、各人のマイナポータルに必ず登録させるようにする。そうすれば契約トラブルの解決や防止、それに所得に応じた支援なども将来可能になってくる。
社会が大きく変わろうとしている時に必要なのは数値目標ではなく、新しい発想や仕組みだ。働き方改革で残された課題をマイナンバー制度を駆使して前進させる。旧大蔵省で納税番号の検討を担当して以来30年という、森信氏の番号研究の厚みと広がりを展開していただいた90分だった。
ゲスト / Guest
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森信茂樹 / Shigeki Morinobu
東京財団政策研究所研究主幹 / Research Director, The Tokyo Foundation for Policy Research
研究テーマ:デジタル庁とマイナンバー
研究会回数:7