2020年11月30日 11:00 〜 12:30 10階ホール
「米大統領選の行方」(8) 西山隆行・成蹊大学教授

会見メモ

アメリカの政治や社会問題に詳しい西山隆行・成蹊大学教授が大統領選挙を踏まえた今後の展開、アメリカ社会の展望、日本や国際関係への影響などについて話した。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「二大政党、双方とも危機」

大石 格  (日本経済新聞社上級論説委員)

 西山教授は米政治の研究者として、2020年の大統領選をさまざまな観点から分析してみせた。印象的だったのが、二大政党の双方とも党内の路線対立が激化しており、危機的な状況を迎えつつあるという指摘だ。

 共和党については、選挙前は「党をトランプに乗っ取られた」「トランプ党に変質した」との報道が多かった。共和党執行部は選挙後も負けを認めないトランプを表向きは支持し続けている。

 しかし、西山教授はいまの共和党はレーガン流の保守主義とトランプ派が合体したものであり、トランピズム一色ではないとの見方だ。白人の比率が低下するなかで、人種差別発言による白人の支持固めよりも、増加する中南米系の支持獲得を重視する考えもあるという。

 今回の選挙では、中南米系の共和党支持が増えており、その動向に大いに注目すべきだと強調した。

 民主党の方も、国民皆保険などを求める民主社会主義者、人種差別撤廃に軸足を置くブラック・ライブズ・マター運動などの寄り合い所帯であり、まとまりに欠けるという。打倒トランプという目標があった選挙戦では大同団結できたものの、政権発足後は足の引っ張り合いは不可避だという。

 バイデン支持者のほとんどが、その理由として「トランプではない」を挙げていたということは、そもそもバイデンでなくても民主党は勝てたのか、という疑問はもっともである。

 価値観が多様化するなかで、二大政党という枠組みにすべての政治課題を収斂できなくなっている。トランプが巨額の公共投資を打ち出したことで、共和党の枠組みからはみ出しだ「小さな政府」論者がどこに向かうのか。リバタリアンが勢力を拡大すれば、二大政党の枠組みにも影響しかねない。


ゲスト / Guest

  • 西山隆行 / Takayuki Nishiyama

    日本 / Japan

    成蹊大学学長補佐/法学部政治学科教授 / Advisor to the President / Professor, Department of Political Science, Faculty of Law, Seikei University

研究テーマ:米大統領選の行方

研究会回数:8

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