2020年11月30日 15:00 〜 16:00 10階ホール
セルギー・コルスンスキー新駐日ウクライナ大使 会見

会見メモ

10月に着任したセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が、米大統領選を踏まえた今後の対米関係、ロシアを含む欧州の情勢、日本との2国間関係などについて話した。

大使は外務省経済局長、駐トルコ大使、ウクライナ外交アカデミーのディレクターなどを歴任。2014年、ロシアがウクライナを侵攻した際は駐トルコ大使。当時を「悲劇的ショックで数カ月眠れない日々」「あらゆる機会を通じトルコの支持を取り付けることが任務だった」と振り返った。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 大野理恵(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

対ロシアでトルコと協力

平岩 貴比古 (時事通信社外信部)

 混迷を深めた米大統領選が終わり、いよいよ2021年1月にバイデン次期政権が始まる。トランプ大統領がこの政敵を追い落とそうと、19年7月に東欧の旧ソ連構成国に圧力をかけたのが「ウクライナ疑惑」だった。

 政争に巻き込まれた国から10月に着任したコルスンスキー駐日大使は「どのような選挙結果も歓迎する」と中立性を保つ。ただ、副大統領時代からロシアに厳しいバイデン氏について「ウクライナにとって古き良き友人。わが国が置かれている状況や直面している脅威を熟知している」と期待を隠さない。

 ウクライナ疑惑は、トランプ氏がウクライナの大統領に対し、軍事支援と引き換えに同国企業役員を務めたバイデン氏の息子の不正調査を迫ったとされるもので、米上院の弾劾裁判に発展した(2月に無罪評決)。大使は記者会見で「トランプ政権で小型兵器の供給が開始され、安全保障が強化された」と謝辞を忘れなかった。

 ウクライナは14年にロシアの介入を受け、南部クリミア半島を奪われたほか、東部で1万人以上が死亡する紛争が続く。日本とも北方領土問題を抱えるロシアは「帝国のメンタリティー」(コルスンスキー氏)を持つ一方、最近では旧ソ連圏の政情が不安定化し、プーチン大統領の影響力に陰りも見える。

 特にこの秋のナゴルノカラバフ紛争では、トルコを後ろ盾とするアゼルバイジャンが親ロシアのアルメニアから占領地を奪還。ロシアと対立するウクライナの大使として結果を「歓迎している」と表明し、外交による解決が最善だと前置きしながらも「クリミア返還へ希望はさらに大きくなった」と捉える。

 実はトルコとドローン開発を通じて軍事協力を深化させており、駐トルコ大使だった自身は立役者の一人。トルコ製ドローンはナゴルノカラバフで威力を発揮したほか、ウクライナで配備が進み、ロシアが警戒している。


ゲスト / Guest

  • セルギー・コルスンスキー / Sergiy Korsunsky

    ウクライナ / Ukraine

    駐日ウクライナ大使 / Ambassador of Ukraine to Japan

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