2020年11月25日 13:00 〜 14:00 10階ホール
「新型コロナウイルス」(51) 清水康之・いのち支える自殺対策推進センター代表理事

会見メモ

「いのち支える自殺対策支援センター」の清水康之代表理事が、10月までの自殺者数のデータをもとに、コロナ禍や自殺報道が自殺者数にどのような影響を与えたのかなどについて分析、考察した。

清水氏は元NHKディレクター。2004年にNHKを退局、NPO法人自殺対策支援センターライフリンクを設立した。自殺対策の法制化を求める3万人署名を企画・展開。10万人の署名を集め、自殺対策基本法(06年6月公布、11月施行)の成立に貢献したほか、超党派の「自殺対策を推進する議員の会」のアドバイザーとして16年の同法改正にもかかわった。

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

 


会見リポート

有名人「自殺報道」で自殺者数増/メディアはガイドライン策定を

松田 崇裕 (TBSテレビ報道局社会部長)

 当初は「コロナ禍における自殺と自殺対策の現状」だった表題が、急きょ「10月の自殺増加に関する緊急報告」に変わり、資料には“緊急”という文字が赤で記されていた。理由は、直前に警察庁から届いた10月の自殺者数の増加にあった。

 今年前半は、コロナ禍の外出控えなどの影響からか、自殺者数は例年より減っていたという。この状況が変化したのは7月と9月末。有名俳優と女優が「自殺」し、これを境に自殺者数は増加傾向となった。この時期いずれも2人の死を伝えるニュースが相次いだことから、清水氏はマスメディアの報道に影響され、自殺が増える事象=「ウェルテル効果」がうまれたのではないかと分析した。同時期の自殺に関する相談電話には「報道に引き込まれる」といった声や「具体的な“場所”が報じられ過去の苦しみが再燃した」という遺族の意見も寄せられたという。

 今年はこのほか有名女子プロレスラーなど著名人の死が相次ぎ、各社は報道と合わせて相談電話の告知を行うなど「自殺と報道」をめぐる象徴的な年になった。清水氏は、WHO自殺予防ガイドラインに沿って「センセーショナルに報じない」「手段、場所を細かく伝えない」ことなどをメディア側に要望した。

 その上で、自殺を考える人に「生きる道」を提示する報道、メディアが自殺を抑制する効果=「パパゲーノ効果」をうむ、報道のあり方を探るべきだと述べた。清水氏は元NHKディレクターという経歴で、自身の報道経験からも「自殺報道」を全否定する立場には立っていない。時代と現状にあったガイドラインの策定をメディアに求め、近く各社にアンケートを実施する予定だという。清水氏は、今後もメディア側と連携し、自殺者を減らすための発信を強めていく考えだ。


ゲスト / Guest

  • 清水康之 / Yasuyuki Shimizu

    いのち支える自殺対策推進センター代表理事 / Representative Director, Japan Suicide Countermeasures Promotion Center(JSCP)

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:51

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