会見リポート
2020年11月06日
10:30 〜 12:00
10階ホール
人文社会系学協会連合連絡会 会見
会見メモ
日本学術会議の任命拒否問題で、人文・社会科学系の220余の学会が連携し、任命拒否の理由の説明と撤回を求める共同声明を発表した。
会見では文学、哲学・宗教、歴史、社会、教育など10学会の会長が登壇し、共同声明の発表に至った経緯や学問の自由が侵されることへの懸念などについて話した。
事務局によると、人文社会科学系の諸学会のほぼ全分野が集まり、意見表明するのは初という。
司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
■登壇者(写真左から)
島薗進・日本宗教研究諸学会連合委員長(上智大学実践宗教学研究科 教授)
坂上貴之・日本心理学会理事長(慶應義塾大学 名誉教授)
石井まこと・社会政策学会代表幹事(大分大学経済学部 教授)
木村茂光・日本歴史学協会常任委員(前委員長)(東京学芸大学 名誉教授)
佐藤泉・日本近代文学会運営委員長(青山学院大学文学部 教授)
野家啓一・日本哲学系諸学会連合委員長(東北大学 名誉教授)
木原活信・日本社会福祉学会会長(同志社大学社会学部 教授)
広田 照幸・日本教育学会会長(日本大学文理学部 教授)
河村哲二・経済理論学会代表幹事(法政大学経済学部 教授)
木本忠昭・日本科学史学会会長(東京工業大学 名誉教授)
会見リポート
「学問の健全な発展の障害に」
梅野 光春 (東京新聞社会部)
「人文社会科学でこれだけの数の学会が一つにまとまって表明するのは、歴史的に見て初めてだろう。任命拒否問題によって動揺と不安が広がっていることを示している」。木原活信・同志社大教授は会見で、226の学協会などが加わった共同声明の意味を、こう解説した。
会見の主体となった「人文社会系学協会連合連絡会」は、学術会議の任命拒否問題を受けて10月につくられ、学協会に所属する人たちの「最大公約数を探って」(広田照幸・日大教授)、拒否理由の説明と6人の任命を求める計2点に絞った声明をまとめた。
会見では、任命拒否に対する厳しい意見が相次いだ。野家啓一・東北大名誉教授は「人文社会系だけ狙い撃ちにされ、新規候補者としては2割に当たる数が任命を拒否された。研究を進める学会と、研究成果を社会に還元する学術会議は車の両輪なのに、そのうちの一つを破壊する暴挙だ。しかも理由を説明するという民主主義の原則を破った」と非難した。
佐藤泉・青山学院大教授は「理由が分からないまま突然、6人が排除された。恐ろしい。日本近代文学では、戦前の言論統制も重要な研究テーマだが、当時の文学の状況は深刻で、メディアからも多様性が失われた。統制下で、言うべきことを言える強い人はそう多くない」と訴えた。
「任命拒否による研究者の排除は、国家に害を与える」と指弾したのは木本忠昭・東工大名誉教授。また「国立大の学長の選出や人事に国が関与するのではという懸念もある。研究費も削られている」(島薗進・上智大教授)と、大学や人文社会科学の近況との関わりも指摘された。
任命拒否が学術会議の運営に支障を与えると危惧したのは木村茂光・東京学芸大名誉教授。「210人の会員のうち6人というと少なく見えるが、人文社会系は70人。そのうち6人が欠けた。これまで6人でやっていた分科会を5人でやるとか、1人当たりの担当を増やすということになる。これは学問の健全な発展の障害につながる」と述べた。
ゲスト / Guest
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石井まこと / Makoto Ishii
社会政策学会代表幹事(大分大学経済学部教授)
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河村哲二 / Tetsuji Kawamura
経済理論学会代表幹事(法政大学経済学部教授)
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木原活信 / Katsunobu Kihara
日本社会福祉学会会長(同志社大学社会学部教授)
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木村茂光 / Shigemitsu Kimura
日本歴史学協会常任委員・前委員長(東京学芸大学名誉教授)
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木本忠昭 / Tadaaki Kimoto
日本科学史学会会長(東京工業大学名誉教授)
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坂上貴之 / Takayuki Sakagami
日本心理学会理事長(慶應義塾大学名誉教授)
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佐藤泉 / Izumi Sato
日本近代文学会運営委員長(青山学院大学文学部教授)
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島薗進 / Susumu Shimazono
日本宗教研究諸学会連合委員長(上智大学実践宗教学研究科 教授)
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野家啓一 / Keiichi Noe
日本哲学系諸学会連合委員長(東北大学名誉教授)
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広田照幸 / Teruyuki Hirota
日本教育学会会長(日本大学文理学部教授)