2020年11月17日 16:30 〜 17:30 10階ホール
焼家直絵・国連世界食糧計画(WFP)日本事務所代表 会見

会見メモ

2020年のノーベル平和賞に選ばれたWFP(国連世界食糧計画)の焼家直絵・日本事務所代表が、WFPの現状と課題について話した。また5年以上の内戦により深刻な食糧不安に直面している中東イエメンでの支援活動について、ローマからオンラインで登壇したWFPイエメン事務所副代表のラスムス・エーゲンダル氏に聞いた。

WFPウェブサイト

WFPのイエメンでの活動(WFPウェブサイト)

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事兼事務局長

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

飢餓パンデミックの瀬戸際に/食料支援も重要な安全保障

荒 ちひろ (朝日新聞社国際報道部)

 今年のノーベル平和賞の受賞が決まった国連世界食糧計画(WFP)。会見冒頭、焼家さんは今回の受賞について「飢餓に苦しむ人々にスポットライトを当て、新型コロナによる飢餓パンデミックに警鐘を鳴らす機会になった」と述べた。

 長年、紛争や災害で苦しむ人々に食料を支援してきた「現場主義」の国連機関で、約90%の職員がフィールドで勤務する。自身も各地に駐在し、2013~15年に副代表を務めたシエラレオネでは、エボラ出血熱の流行下で隔離地域への支援を続けた。「誰も取り残さない」という国連職員としての使命を再認識し、「食料があれば困難を乗り切っていけると実感した」と振り返った。

 現在、世界で食料不安を抱える人は約6億9千万人いるとされ、その60%が紛争地域に暮らす。また、途上国などで脆弱な立場にある人は、食費が支出の大部分を占める場合が多く、収入の減少は飢えに直結する。急性の食料不安に陥る人は、新型コロナの影響で8割以上増えて2億7千万人に膨れあがるといい、「世界はいま飢餓パンデミックの瀬戸際にある」と指摘。「コロナ禍で一番苦しんでいるのは、セーフティーネットのない国や地域の人々。国際的な連帯が今、緊急に求められている」と訴えた。

 イエメン事務所のラスムス・エーゲンダル副代表もテレビ会議形式で参加。5年にわたる内戦下のイエメンは、新型コロナの影響でさらに状況が悪化しており、「緊急支援がいま最も必要とされている」と訴えた。米大統領選の結果が支援の現場にどのような影響があるか、という会場からの問いには、「米国は民主、共和どちらの政権でも常に最大のドナー国であり続けてきた」と、変わらぬ支援を期待し、「国際的な支援は正しいことであると同時に、世界的な安全保障にとって基本的で重要な要素でもある」と強調した。


ゲスト / Guest

  • 焼家直絵 / Naoe Yakiya

    国連世界食糧計画(WFP) / WFP (World Food Programme)

    国連世界食糧計画(WFP)日本事務所代表 / Director, WFP Japan Relations Office

  • ラスムス・エーゲンダル / Rasmus Egendal

    国連世界食糧計画(WFP) / WFP (World Food Programme)

    国連世界食糧計画(WFP)イエメン事務所副代表 / Deputy Director, WFP Yemen Relations Office

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