2020年11月09日 15:30 〜 16:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(48)世界の現状、三大感染症への影響、国際協力  國井 修・世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)戦略投資効果局長

会見メモ

アフリカを中心に途上国の感染症対策に取り組むグローバルファンド(本部・ジュネーブ)は、新型コロナウイルス対策にもあたっている。医師で感染症の専門家である國井修戦略投資効果局長が登壇し、新型コロナウイルスの世界の現状と三大感染症への影響、国際協力について分析した。著書に各国の対策を分析した『人類vs感染症 新型コロナウイルス 世界はどう闘っているのか』(CCCメディアハウス)がある。

司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員(共同通信客員論説委員)


会見リポート

不安を煽るメディアに一喜一憂しない

小出 重幸 (読売新聞出身)

 途上国を中心に、三大感染症の医療対策を支援する――「グローバルファンド」は2002年、財界や各国政府の出資で発足した独立系の国際機関。國井さんは、本部のあるスイス・ジュネーブを拠点に、COVID-19対策に軸足を置いて活動している。

 感染拡大を抑えるためには、ワクチンに過度に期待せず、検査・診断の効果的な投入が有効。途上国には、なによりも素早い支援が求められると、感染症対策の課題を語った。

 自治医科大学、ハーバード大学大学院出身。内科医の傍らアフリカなど途上国支援に取り組み、長崎大学教授、国連児童基金(ユニセフ)を経て、2013年からグローバルファンドで活躍している。

 ある時点から急速に症状が悪化する症例がある、これが、COVID-19が恐れられる特色だが、インフルエンザ、結核など他の感染症の実態と比較しながら、リスクを俯瞰的にとらえる必要性を強調。百万人あたりの死者数(日本は14人)を見ていけば、全体的な状況は把握できると言う。「メディアが報じる患者数の増減に一喜一憂しないこと、理不尽な差別を排除することが大切」と、情報汚染にのみ込まれない知恵を語った。

 先進国の関心がCOVID-19対策に傾くあまり、途上国での感染拡大や、結核など従来型の感染症対策が忘れられがちな状況を心配する。また日本では、この世界に若者と女性の活躍が極端に少ないことも気がかりだ。「世界の中での日本の将来を考えれば、要所を次世代に託す、巨視的な社会デザインが必要です」

 医療体制や、社会的規制と経済維持のバランスなど、日本の対応は世界の中でも評価されているとする一方、今後は出入国の感染者対策が課題だとする。「国境閉鎖を続けて、抵抗力のない日本人が海外に出られなくなることもリスク、感染者の大量流入もリスク、難しいかじ取りが待っている」。感染症対策に「絶対」がないことも強調した。


ゲスト / Guest

  • 國井修 / Osamu Kunii

    世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)戦略投資効果局長 / Head of Strategy Investment and Impact, The Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:48

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