2020年11月16日 14:30 〜 16:00 10階ホール
著者と語る『戦後日本政治の総括』 田原総一朗氏

会見メモ

ジャーナリストの田原総一朗氏が、自身の半生を振り返りながら戦後政治の変遷をまとめた著書『戦後日本政治の総括』(岩波書店2020年6月)執筆の動機や最近の政治情勢について話した。

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

「あくまでジャーナリストです」

鈴木 美勝 (専門誌「外交」前編集長)

 「夏休みが終わって価値観が180度変わった。偉い人の話は信用できない」。1945年終戦の日を境に変節した大人たちの裏切りへのクレーム。焼け跡闇市派・田原総一朗氏は自身の原点を語り始めた。そして、安倍晋三首相(当時)らへの差しの取材情報を織り交ぜ、時には「朝まで生テレビ」風に後輩の記者たちに回答を求めて挑発、田原流で会見を盛り上げた。

 「僕はあくまでジャーナリストですッ」。この言葉は、政界に深く食い込む一方で、政治権力とは一定の間合いをもって対峙してきた言論人の矜持を感じさせた。生業への愛着と劇的に動く世界。「今後どうなるか、専門家が自信をもって言えない。ジャーナリストにとって、こんなに面白い時代はない」と締めくくった。

 冷戦下、「左翼」青年として街頭で活動、実社会に入ってソ連体験を機に「転向」、71年、宮澤喜一への取材を機に政界の舞台裏に足を踏み入れた。「押し付けられた洋服に身体を合わせた」宮澤の生き方に共感したが、冷戦が終結、「日本は主体性と自立を真剣に考えざるを得ない」時代に入った。「身体に合わせた洋服をつくる危険性を強く感じる」、かと言って「非核国として自立する、と、すっきり言い切ることへのためらい」―著書につづられた思いには、矛盾はらむ昭和史への真摯な向き合い方が映し出された。非政治の世界では、自身の体感とリアリティの狭間で悩むことはなかったとしても、時に悪魔と手を結んでも進まねばならない政治の世界ではそうはいかない。

 質疑応答でそれが垣間見られた。菅義偉首相を高く評価する理由、日本学術会議問題を巡る質問への回答は、田原氏にしては切れ味を欠いた。一途なジャーナリスト人生―言論・表現の自由を命がけで守り抜いてきた自負と信念にけれん味はないが、問題が学問の本質に関わるだけに舌足らずの感は否めなかった。


ゲスト / Guest

  • 田原総一朗 / Soichiro Tahara

    日本 / Japan

    ジャーナリスト / journalist

研究テーマ:『戦後日本政治の総括』

ページのTOPへ