2020年11月13日 11:00 〜 12:00 10階ホール
荒中・日本弁護士連合会会長 会見

会見メモ

荒中(あら・ただし)・日本弁護士連合会会長が登壇し、コロナ禍での日弁連の活動、自身のライフワークである法曹養成・法曹人口問題、刑事司法の課題などについて話した。

荒氏は福島県相馬市の出身。1979年東北大学法学部卒、82年弁護士登録。仙台弁護士会会長、日弁連副会長、同事務総長などを経て、今年4月1日に会長に就任した。東京、大阪以外の弁護士会からの会長就任は2人目となる。

司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

34年ぶり、地方から会長選出/震災経験生かしたコロナ対応

竹田 昌弘 (共同通信社編集委員兼論説委員)

 東日本大震災で被災した宮城県の仙台弁護士会に所属している。東京と大阪以外の弁護士会から、弁護士約4万2千人の頂点に立つ日弁連会長が出たのは、実に34年ぶり2人目だ。今年の会長選には5人が立候補し、決選投票を勝ち抜き当選した日は、くしくも震災から9回目の3月11日だった。

 地元河北新報記者の質問に答え「人間の復興を目指し、手探りでやってきた。被災者が被災者を支援するのが災害であり、二重ローンとなった人の支援などは、今年の新型コロナウイルス感染症対策にも役立っている」と明かした。

 そのコロナ対策で、日弁連は4~7月、市民と事業者から計約4400件の法律相談を受けた。市民向け窓口で多かったのは、労働問題(30%)、キャンセルなど消費者問題(21%)、借入金(7%)の順という。

 荒さんは「差別のない社会をつくるために」「個人債務者への『自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン』の適用開始に当たって」「雇用調整助成金の迅速な支給拡大を求める」などの会長声明を次々に出し、課題への対応を提言。日弁連はコロナ禍に適任者を得たようだ。

 一方、刑事司法を巡り、被告の保釈率や容疑者の勾留請求が却下される割合がアップし、身体の自由と引き換えに否認しないよう迫る「人質司法」の解消へ「少しずつ前進」と評価した。さらに弁護人の取り調べ立ち会いを求めていくという。

 菅政権による日本学術会議会員の任命拒否については、政府が首相任命制の導入時に「形式的任命」と説明していたことを念頭に「立法や法改正では、行政府が国会で骨格を約束する。それと違う運用をするのであれば、国会で説明し、当否をはっきりさせないと」と指摘する。

 「学問の自由に関わりかねない問題が起きた」と硬い表情で語り、先行きを案じている様子だった。


ゲスト / Guest

  • 荒中 / Tadashi Ara

    日本 / Japan

    日本弁護士連合会会長 / President, Japan Federation of Bar Associations (JFBA)

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