2020年10月16日 13:30 〜 14:30 10階ホール
ニダル・ヤヒヤー駐日レバノン大使 会見

会見メモ

8月4日にベイルート港で起きた爆発事故は、死者220人以上、負傷者6000人以上という大規模災害となった。新型コロナウイルス感染症の拡大による経済の停滞もあり、国民生活は窮状に陥っている。

ヤヒヤー大使がレバノンの現状を説明するとともに、支援を訴えた。

大使発言のスピーチテキスト(日本語)

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 フラート・バンタン(レバノン大使館)/  森岡幹予(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

大爆発からの復興、難題山積/日本にも支援を求める

飯島 健太 (朝日新聞社テヘラン支局長)

 レバノンの首都ベイルートの湾港地区で起きた大爆発は世界に衝撃を与えた。あれから2カ月、駐日レバノン大使のニダル・ヤヒヤー氏が会見でまず語ったのは、日本など各国の支援に対する感謝の言葉だった。一方、被害総額が80億ドルともいわれる惨状を前に、より多くの援助が必要とも訴えた。会見では、国を再建する難しさや課題を改めて確認できた。

 8月4日の爆発後、大規模な反政府デモが起きた。同10日にディアブ首相(当時)が引責辞任すると、同31日にアディブ駐ドイツ大使が新しい首相に指名された。だが、アディブ氏は組閣を断念し、首相就任を辞退した。会見前日の10月15日には、次の首相指名を話し合う協議が予定されていたが、急きょ延期されていた。

 こうした政治的な混乱を招く要因について、ヤヒヤー氏はレバノンの政治制度を挙げ、自ら「ユニーク」と述べた。18の宗教・宗派が共存する同国では、宗派間で主要ポストを分け合う。このため、常に懸念されるのが勢力バランスだという。

 ヤヒヤー氏は「イスラム教徒とキリスト教徒がそれぞれ、人口の半数を占めている。こうしたユニークな点を理解してほしい」と語った。

 経済や財政は危機的な状況が続く。今年3月にはデフォルト(債務不履行)に陥った。ヤヒヤー氏は「危機の主な理由は、パレスチナ40万人、シリア160万人の難民だ」と主張。日本にも支援を求めた。

 1年前の2019年10月17日には、汚職の追放や経済の改革を求める大規模な抗議デモが始まり、ハリリ首相(当時)の辞職につながった。フランスを筆頭とする国際社会がいま、支援の引き換えに求めるのも国政の刷新だが、ハリリ氏が次の首相として有力視される。ヤヒヤー氏は「非常にデリケートな問題だ。国際的に知名度の高いハリリ氏に対する期待感がある」と述べた。


ゲスト / Guest

  • ニダル・ヤヒヤー / Nidal YEHYA

    レバノン / Lebanon

    駐日レバノン大使 / ambassador to Japan

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