2020年10月23日 11:00 〜 12:00 10階ホール
「コロナ危機下のバランスシート問題への対応に関する政策提言」会見

会見メモ

金融や事業再生の専門家で構成される「コロナ危機下のバランスシート問題研究会」が政策提言をまとめた。

研究会のメンバーのうち梅屋真一郎・野村総研未来創発センター主席研究員、高田創・岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長、冨山和彦・経営共創基盤IGPIグループ会長、小林信明・長島・大野・常松法律事務所 パートナーの4氏がオンラインで会見し、提言をもとに、今後必要となる施策などについて話した。

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

 

写真左から高田創氏、梅屋真一郎氏、小林信明氏、冨山和彦氏(発言順)


会見リポート

3年で企業の債務調整と経営改革を

田村 賢司 (日経BP社日経ビジネス編集委員)

 コロナ禍で日本経済は、2020年4~6月期の実質GDP(国内総生産)で前期比年率28.1%減という未曾有の危機に陥った。08年のリーマンショック以来の急激な需要消失に見舞われた企業を救うために政府は、金融機関を通じて実質無利子無担保融資を実施した。融資額は40兆円に上るという。

 これで危機はいったんしのいだ。だが、金融や事業再生の専門家で構成される「コロナ危機下のバランスシート問題研究会」の高田創氏(岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長)らは、これは意図的に過剰債務が作られたような状況でもあると指摘する。バブル崩壊はバランスシートの左側、資産のデフレが経済を直撃したが、今回は売り上げ消失による赤字が右側の資本を毀損している。緊急融資は、その債務を拡大する結果になっているというわけだ。とりわけ小売りや宿泊、外食などサービス産業を中心とした中小企業は強い打撃を受けている。

 この危機を脱するために返済の実質猶予期間である3年間に、過剰債務の調整と元々生産性の低かった中小企業の事業構造改革が必要だと提言する。まず1つは、事業構造改革のできる専門家を集め、膨大な数の中小企業再生を実行するために地域金融機関を巻き込むべきという。

 さらに2つ目として、過剰な債務調整のために私的整理の枠組み強化が重要になると指摘する。カギは、中小企業向けの中小企業再生支援協議会、中堅企業を主眼とした地域経済活性化支援機構(REVIC)、大企業向けの事業再生ADRの機能強化。緊急貸し付けの中には都道府県などの制度融資もあり、その調整には議会の承認も必要となるが、時間がかかるという問題もある。条例での対応も重要だ。

 「この危機をてこに、むしろ次のチャンスを作るべき」。冨山和彦・経営共創基盤グループ会長はこう言う。


ゲスト / Guest

  • 梅屋真一郎

    野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長

  • 高田創

    岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長

  • 冨山和彦

    株式会社経営共創基盤IGPIグループ会長

  • 小林信明

    長島・大野・常松法律事務所パートナー

ページのTOPへ