2020年10月21日 14:00 〜 15:00 10階ホール
岸田文雄衆議院議員 会見

会見メモ

岸田文雄衆議院議員が、被爆地出身者初の外務大臣を務めた経験を踏まえて執筆した最新の著書『核兵器のない世界へ 勇気ある平和国家の志』(日経BP社、2020年10月)についてや、菅内閣の政策や政権運営に対する所感を語った。質疑応答では自身の今後や、現在取り組んでいる課題について答えた。

司会 伊藤雅之 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「デジタル化は手段」とチクリ

古賀 攻 (毎日新聞社専門編集委員)

 菅政権の誕生で無役になった岸田文雄さんが、2冊目の本『核兵器のない世界へ』を携えて登場した。良くも悪くもけれんみのなさがこの人の持ち味だろう。停滞する核軍縮を動かす構想や菅内閣への注文を、さばさばした表情で語った。

 広島出身の政治家として「核軍縮がライフワーク」という岸田さん。非核保有国の批准が進んで来年1月発効が決まった「核兵器禁止条約」の重要性を認めつつも、核保有国が参加しなければ意味がないとして独自のロードマップを提唱する。「核の数、役割、使う動機を同時に引き下げる」ことで核兵器不拡散条約(NPT)など既存の枠組みを核禁条約に結びつけるという構想だ。

 菅内閣の看板政策であるデジタル化については「手段であって目的ではない。デジタル化を進めてどんな社会を目指すのか、長期的な視野も必要ではないか」とチクリ。

 その心は、まず目指すべき社会像があって、実現の手段としてデジタル化が位置付けられるべきだというものだ。全体像なき実利主義で突き進む菅流政治への批判ないし注文と受け止めるのが自然だろう。

 資本主義の在り方についても話が進み、中国型の国家資本主義や資本の論理優先の新自由主義を「幸せに結びつかない」と退ける。そして日本が目指すべきものは「カネより人に優しい資本主義」だとして、格差を是正し、社会全体の利益を底上げする必要性を説いた。

 この文脈からデジタル社会が格差の拡大や画一化をもたらす可能性にも触れ、「多様性への配慮」を求めた。根っからのリベラル派だ。

 関心を集める学術会議会員の任命拒否については「今までの対応と違うならより丁寧な説明をしないといけない。俯瞰的、総合的な判断ですで済ますのは乱暴ではないか」と言い切った。この発言がほとんど報じられなかったのは残念だ。


ゲスト / Guest

  • 岸田文雄 / Fumio Kishida

    日本 / Japan

    衆議院議員(自由民主党) / Member of the House of Representatives, the Liberal Democratic Party

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