2020年10月02日 13:30 〜 14:30 10階ホール
難波喬司・静岡県副知事 会見

会見メモ

難波喬司・静岡県副知事が、リニア中央新幹線建設と大井川水問題について静岡県の見解を話した。

司会 福田裕昭 日本記者クラブ企画委員(テレビ東京)


会見リポート

都内で異例の会見/リニア問題、県の見解示す

小泉 直樹 (静岡新聞社東京支社編集部)

 「リニア中央新幹線の開業が遅れるのは、静岡県がJR東海に文句を言っているからだ」

 リニアの東京―名古屋間の開業時期が、JRが目標とする2027年より遅れることが不可避とされる中、駅が造られず利益を享受できない静岡県がごねている、との声を耳にする。

 静岡県の難波喬司副知事が、異例ともいえる都内での会見に臨んだのは、こうした県民の思いにそぐわない声を払拭する狙いだった。リニアの開業遅れは沿線各地のまちづくりだけでなく、日本経済にも大きな影響がある。県もそう認識しているからこそ「静岡悪者論」を敏感に捉えている。ただ、県民の関心事である地元河川「大井川」の水問題が曖昧な幕引きになることは拒む構えだ。

 県が問題視するのは南アルプストンネル工事によって、流域住民62万人の生活を支える大井川の水と、南アルプスの生態系への影響がどうなるかの2点が中心だ。これまでに行われた川勝平太静岡県知事と金子慎JR東海社長、藤田耕三前国土交通省事務次官との各会談は、全国ニュースで報道されたものの、協議が進まない理由になっている水問題の詳報は限られていた。

 難波副知事は会見で、なぜ協議が進まないか、県の見解を示した。県とJRが「どの程度の環境影響評価を行うべきか同じ基準に立っていない。環境に影響を与える側のJRが、影響を受ける側の県の基準を受け止め、基準を省みる必要がある」と指摘した。JRは情報開示、地域の理解、科学的根拠に基づく説明のいずれも「決定的に不足している」とし「県民には不信と不安が残り、JRは地域の反応が過剰と思い、信頼関係が築けてない」と強調した。

 オンラインも含め会見に参加した報道関係者約90人のうち、県外メディアは約6割。質疑では県が工事を認めない理由や、大井川の水の県外流出の許容範囲に関心が集まった。

 水問題を巡っては、県とJRが19年1月から県設置の専門部会で議論してきたが、行き詰まり、20年4月からは国交省が主催する専門家会議で協議が続いている。専門家会議が結論を得れば、県はその結論を専門部会で改めて検証する姿勢だ。大井川流域が水の確保に苦しんできた歴史を踏まえ、実りある議論を期待したい。


ゲスト / Guest

  • 難波喬司 / Takashi Namba

    日本 / Japan

    静岡県副知事 / Vice Governor of Shizuoka prefecture

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