2020年10月02日 16:00 〜 17:00 10階ホール
片岡春雄・寿都町長 会見

会見メモ

高レベル放射性廃棄物の地層処分候補地の選定に向けた「文献調査」への応募検討を表明した北海道・寿都町の片岡春雄町長がオンラインで会見し、表明に至った経緯、今後の方向性について話した。

 

寿都町は財源を地方交付税、ふるさと応援寄付金、風力発電の売電収入に依存。コロナ禍で地方交付税の削減、ふるさと応援寄付金の減少が考えられるほか、風力発電の買取期間が順次終了し、売電益の減少が見込まれる。片岡町長は今後の町の財政状況は「不安材料ばかり。早めに手を打つべきと考えた」と説明。また「『核のごみ』問題について、一石を投じ、全国的な議論の輪を広げるべきと考えた」と表明に至った経緯を語った。

 

片岡町長は「『核のごみ』を持ち込むか持ち込まないかではなく、まずは勉強するというのが私の基本的な立場」と主張。「学び続けることで(住民の)判断能力は高まる。途中で立ち止まることもできる」とする一方、地層をよく知るためにも「(文献調査の次の段階である)概要調査(ボーリング調査)まではいくべき」とした。

 

住民の賛否が分かれている現状について片岡町長は、「過半数以上の賛成を肌で感じている」とし、8日の全員協議会を踏まえ、町長としての判断を下す考えをあらためて示した。

 

「文献調査」の応募を巡っては、寿都町に次いで神恵内村の商工会が応募検討を求める請願を村議会に提出。会見同日に開かれた村議会の総務経済常任委員会で採択されている。

 

司会 斉川誠太郎 日本記者クラブ企画委員(北海道新聞)


会見リポート

「核のごみ」処分場選定問題/賛否の中、町長は「突き進む姿勢」

伊澤 健司 (朝日新聞社北海道報道センター)

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定プロセスに、北海道寿都町が10月9日、応募した。手続きが進めば、同じ日に受け入れを表明した北海道神恵内村とともに国内で初めて選定の調査が始まる自治体となる。

 オンライン会見は、応募のちょうど1週間前に開かれた。言葉の端々から、片岡春雄・寿都町長が既に腹を決めていたことがうかがえる。

 ふるさと納税と町営の風力発電で歳入を伸ばしてきた実績を踏まえ「環境に優しいまちづくりを進めてきた寿都町だからこそ、核のごみに一石を投じて全国的な議論の輪を広げる」と応募の理由を説明した。

 選定プロセスは、①論文などに基づく2年間の「文献調査」②ボーリングを伴う4年間の「概要調査」③地下施設を設ける14年間の「精密調査」と20年に及ぶ。交付金は①で最大20億円、②で最大70億円が得られる(③は未定)。片岡町長は、新型コロナウイルスで打撃を受けた地域経済に不安を抱き、「将来に向けて20億円を有効活用できるよう投資したい」と語った。

 反対を明言する鈴木直道・北海道知事に対しては「(北海道電力)泊原発がありながら、核のごみは北海道にいらないという議論そのものが違うのでは。まず勉強しようというのが私の考えだ」と反論した。

 人口約2900人の町内には、応募の賛否を問う住民投票を求める声もあるが「過半数以上の賛成をいただいていると肌で感じる」。応募後は「核のごみを受け入れるかは今、決めるべきではない」としつつ「概要調査まで行くべきだ」と述べた。

 神恵内村については「仲間ができてよかったと心底思う」。そのうえで「数十カ所は手を挙げないと安全な所は分からない」と話した。

 応募検討を表明してから2カ月。反発の声をよそに、突き進む姿勢は全く変わらなかった。


ゲスト / Guest

  • 片岡春雄 / Haruo Kataoka

    日本 / Japan

    北海道寿都町長 / Mayor of Suttsu in Hokkaido

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