2020年10月20日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「よみがえる羅城門」発表会見

会見メモ

京都の文化遺産を後世に継承することなどを目的に2010年に設立された任意団体「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」の松浦晃一郎会長(元ユネスコ事務局長)、呼びかけ人の千玄室・裏千家前家元らが、羅城門の再建プロジェクトを発表した。平安京朱雀大路の南に建てられた羅城門は980年の倒壊後、再建されていないが、『今昔物語』や芥川龍之介の『羅生門』、それを原作とした黒澤明の同名映画など多くの文学、芸術作品に登場する。

 

司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

 

写真左から西園寺氏、松浦氏、千氏、土岐氏


会見リポート

「未来の世界文化遺産目指す」

丸山 ひかり (朝日新聞社文化くらし報道部)

 芥川龍之介の小説や黒澤明監督の映画などで「羅生門」の存在を知っている人は多い。もとは「羅城門」と記し、平安京遷都の794年前後に建てられ、約200年間に2度倒壊し姿を消した。会見で呼びかけられたのは、この門を再び原寸大でよみがえらせるという壮大な構想だ。

 京都の文化人や行政トップなどでつくるNPO法人「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」は、京都の文化遺産の保全・継承などに取り組む一方、設立した10年前から羅城門の復活を目指しているという。賛同する人や企業などに整備主体となってもらい、高さ約24㍍×幅約80㍍の木造の門を当時に近い工法で作り、学習施設なども整備したいという。

 会場で配られた資料では、平安京を「都市を城壁(羅城)で囲わない、外部に開かれた平和な都市」、羅城門を「都に住まう人々の命や暮らしを戦火や疫病から守る精神的な象徴」だったとし、「開かれた隔てのない平和な社会と、戦火や疫病から人々の命と暮らしを守る人類の精神的な象徴としてよみがえらせよう」と意義がつづられていた。

 会見で登壇者はそれぞれの思いを語り、裏千家前家元の千玄室氏は、当時は新型コロナウイルス禍に直面している今と同様、疫病などへの不安があった時代だとし「門を建設することで人々に平安の安らぎを与えることができる」と訴えた。

 ただ当時の場所には人家が立て込んでおり、別の場所での「再建」を目指すという。同法人会長でユネスコ元事務局長の松浦晃一郎氏は「京都の入り口のような場所に、できるだけ同じデザインのものを耐震構造を備えて再現したい」と意気込んだ。また、土岐憲三・立命館大学特別研究フェローは「門の再建で50~60億円ほど、付帯施設に数十億円」と見積もった。

 「200年後の国宝に」「未来の世界文化遺産になることを目指す」といった言葉も飛び出した。ただ、映画と小説の「羅生門」は人間の業が題材で、門はすでに荒廃した状態で描かれている。おどろおどろしいイメージをどう変え機運を高めるかという会場の質問に、松浦氏は「今日の会見を、新しいイメージを持っていただく出発点にしたい」と語った。


ゲスト / Guest

  • 松浦晃一郎

    「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」会長/元ユネスコ事務局長

  • 千玄室

    裏千家前家元

  • 土岐憲三

    立命館大学特別研究フェロー

  • 西園寺裕夫

    公益財団法人五井平和財団理事長

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