2020年09月25日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「アメリカ大統領選挙と中東」高橋和夫・放送大学名誉教授

会見メモ

『最終決戦 トランプvs民主党 - アメリカ大統領選撤退後もカギを握るサンダース - 』(ワニブックスPLUS新書 2020年7月)、『中東の政治』(放送大学教育振興会 2020年3月)などの著書がある高橋氏が、米大統領選挙の展望と中東への影響について話した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

『最終決戦 トランプvs民主党 - アメリカ大統領選撤退後もカギを握るサンダース - 』

『中東の政治』


会見リポート

米内政から中東情勢を読む

川北 省吾 (共同通信社編集委員)

 不俱戴天の敵だったイスラエルとアラブ諸国の国交正常化。イランの核開発を巡る緊張の高まり―。11月の大統領選を控えた米内政の文脈から、激動する中東情勢を読み解き、縦横に語り尽くした。

 高橋さんによると、米政治を理解する上で、重要な数字が3つある。キリスト教保守派(福音派)が人口の4分の1を占め、うち4分の3は白人で、その8割が4年前、トランプ氏に投票したことだ。

 米国の人口は3億2千万余りだから、約4800万人の福音派がトランプ氏を支持し、大統領の座に押し上げたことになる。同派をつなぎ留めることが「再選の必要不可欠の条件」と解説した。

 福音派は聖書を絶対視する。1948年のイスラエル建国は、滅亡した古代王国がよみがえり、聖書の預言が成就した「神の奇跡」と捉え、約束の地パレスチナのユダヤ化こそキリスト再臨の準備と信じる。

 その宗教観に立てば、占領地へのユダヤ人入植を押し進めるネタニヤフ首相は神意の体現者と映る。彼を助け、イスラエルと敵対するイランに圧力を加えることが福音派の支持を固めることになる。

 選挙戦の終盤になり、トランプ大統領がイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンの国交正常化を仲介したり、イラン制裁の強化に動いたりした背景には、内政上の思惑がある。

 だが、当のネタニヤフ氏は政権交代を見据えているらしい。トランプ氏のお墨付きを得た占領地ヨルダン川西岸の併合を見送ったのは、併合に反対するバイデン民主党候補への配慮との見方を示した。

 イスラエルとの「特別の関係」に支えられてきた米中東外交だが、若者を中心とする民主党左派の間では、入植・併合への反発からパレスチナ支持者の方が多いという。変化の予兆をうかがわせる興味深い指摘だった。


ゲスト / Guest

  • 高橋和夫

    放送大学名誉教授

研究テーマ:アメリカ大統領選挙と中東

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