2020年10月14日 15:00 〜 16:00 10階ホール
葛西健WHO西太平洋地域事務局長 会見

会見メモ

WHO西太平洋地域事務局長の葛西健氏がフィリピン・マニラからオンラインで会見し、東アジアや東南アジアなど西太平洋地域における新型コロナウイルス感染拡大の現状とWHOの取り組みについて話した。

司会 内城喜貴 日本記者クラブ特別企画委員(共同通信社客員論説委員)

 


会見リポート

コロナ誤情報対応に試行錯誤

田中 泰義 (毎日新聞社くらし医療部長)

 世界の死者が100万人を上回った新型コロナウイルス感染症。今も欧州を中心に感染者が増えている。会見では「世界のどこかで流行している限り、どの国も安全にならない」「中長期的に協調、連携して闘わなければならない」と繰り返し、強い危機感を示した。

 葛西さんは慶応大医学部卒。厚生省(現・厚生労働省)を経て世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局感染症対策課長などを歴任、2019年2月、同事務局長に就任した。日本を含む37カ国・地域(人口約19億人)の保健行政の司令塔だ。

 多様性に富む管内の情勢は、世界の縮図らしい。日本のように先端の治療が受けられる国もあれば、医療体制が脆弱な途上国や島国もある。そもそも感染者が初めて報告されたのは中国・武漢だ。一律ではない政策提言や支援が求められ、発言からは管内での取り組みを世界のモデルにしたいという気概を感じた。

 興味深かったのは、WHOが「情報」との向き合い方に腐心していることだ。今は、誰もがSNSなどを通して世界中に情報を発信できる時代だ。また、科学の急速な進歩に伴い、新型コロナに関する新しい知見が次々と発表され、新たなタイプのワクチン開発も進む。

 しかし、あふれる情報には誤りも多く、最新の知見が後に修正されることもある。2003年のSARS流行時に対応した葛西さんにとっても、この点は大きな状況変化といい、「誤情報への対応に試行錯誤している。感染症に国境はなく、拡大防止には一人一人の行動が重要だ。ネットで市民が正しい情報にたどりつけるように関係企業と工夫している」と明かした。

 秋以降、国内でも再流行やインフルエンザとの同時流行が懸念されている。出席者はWHOへの注文や日本の評価などについて相次いで質問。活発な意見交換が展開された。


ゲスト / Guest

  • 葛西 健 / Takeshi Kasai

    世界保健機関(WHO) / World Health Organization (WHO)

    西太平洋地域事務局長 / Regional Director for the Western Pacific

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