2020年09月30日 15:00 〜 16:00 10階ホール
リチャード・コート駐日オーストラリア大使 会見

会見メモ

10月に日本での任期を終えるリチャード・コート大使が登壇し、着任からの4年間を振り返るとともに、新型コロナウイルス、日豪間の「特別な戦略的パートナーシップ」、「自由で開かれたインド太平洋地域」の平和と繁栄における緊密な協力や、その他の2国間関係の現状や展望について話した。

司会 土生修一・日本記者クラブ専務理事/事務局長

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

 


会見リポート

蜜月の日豪、安保関係も強化

小暮 哲夫 (朝日新聞社シドニー支局長)

 着任から4年、退任を前にしたリチャード・コート大使の会見は、緊密さを増す日豪関係を象徴する内容となった。

 特別な経験として、2018年の安倍晋三首相とモリソン首相の豪北部ダーウィンでの会談への同行を挙げた。太平洋戦争中の1942年、日本軍はダーウィンを空爆した。「犠牲を振り返り、域内平和のため、たゆまない努力をする場に立ち会えた」と振り返った。かつての敵国同士の和解を確認する歴史的な訪問だった。

 安全保障面での関係の強化も強調した。東シナ海や日本海では18年から豪軍が北朝鮮による違法活動の監視で協力。豪州の森林火災の消火活動には自衛隊が今年、輸送機を派遣した。「安全、安定、繁栄するインド太平洋を築く双方の強い決意の表れだ」と述べた。念頭には、南シナ海での軍事拠点化を進める中国がある。豪州はその動きが周辺の太平洋の島国に及ぶことも懸念する。

 豪州と中国の関係は、新型コロナウイルスの中国の初期対応などを巡って悪化している。このことを問われ、「ときどき緊張が走ることはある」「中国は域内で自己主張を強めつつある」と認めつつも、最大の貿易相手国だとして「違いを乗り越えるために建設的な対応が重要だ。日中関係に似ている」と答えた。

 日豪関係のもう一つの柱である経済分野では、水素などクリーンエネルギーでの協力に期待を示した。

 友好関係の多様さも紹介した。107もの姉妹都市交流があり、豪州人の間では、日本語学習熱が高く、日本は北海道へのスキーなど旅行先として人気だ。

 両国の間では、自衛隊と豪軍が互いの国を訓練や災害支援などで円滑に訪れるようにする協定の交渉が進む。合意すれば、両国関係を一段と深める協定の基盤に、こんな信頼と交流の積み重ねがあることは確かだろう。


ゲスト / Guest

  • リチャード・コート / Richard Court

    オーストラリア / Australia

    駐日オーストラリア大使 / Ambassador of Australia to Japan

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