2020年08月31日 14:00 〜 15:15 10階ホール
「新型コロナウイルス」(40) 接触確認アプリ 岸本充生・大阪大学社会技術共創研究センター長、工藤郁子・同センター招へい教員

会見メモ

新型コロナウイルス感染症の陽性者と濃厚接触した可能性を通知する「接触確認アプリ(COCOA)」に対する評価や、接触追跡技術の効果と課題などについて、大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)の岸本充生センター長と工藤郁子招へい教員に聞いた。両氏は4月から共同で「接触確認アプリとELSIに関する10 の視点」を公表し、倫理的・法的・社会的側面から、個人がアプリを利用するかどうかを判断する際の目安を示している。ELSIは倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)の頭文字。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

■投影資料:岸本氏工藤氏


会見リポート

COCOA開発で提言

藤川 大樹 (東京新聞社会部)

 新型コロナウイルスの感染者との接触をスマートフォンで確認できるアプリ「COCOA(ココア)」の開発にあたり、大阪大学社会技術共創研究センターは、想定されるELSI(倫理的・法的・社会的課題)について提言を続けてきた。

 ELSIとは聞き慣れないが、米国で1990年にスタートした「ゲノム解析プロジェクト」の中に登場した言葉だという。岸本充生センター長(右)は「ヒトゲノムが全て解析された暁に、どんなことが起きうるかをあらかじめ考えておき、手を打とう、というもの」と説明する。

 新しい科学技術のシーズ(種)が、実際の社会に組み込まれるまでには、さまざまなハードルを乗り越える必要がある。安全性は確保されるのか、プライバシーや個人情報は守られるのか、差別や不公平を生み出さないか――。新規技術の場合、既にある社会のルールと合わず、過度な恐れから利用が進まなかったり、技術が社会から受け入れられなかったりするケースが少なくない。

 同センターでは、接触確認アプリの開発に合わせ、「自分だったらどういう視点で(利用を)判断するか」についてまとめた「接触追跡技術とELSIに関する10の視点」を、3回にわたって公表。「何のためのアプリか、目的を確認する」「アプリの利用は自発的なものであることを確認する」など「ユーザー目線」の疑問を投げかけ、政策に反映させた。

 接触確認アプリのダウンロード数は8月28日現在、1536万件。陽性登録数はわずか471件で、効果を十分に発揮できているとは言いがたい。国による監視強化やプライバシー侵害への懸念から、アプリのダウンロードが任意となっていることなどが理由だ。

 一部では「個人情報の取得も含め、もっと強い措置を取るべきだ」との声もあるが、工藤郁子招へい教員(左)は「プライバシーと公衆衛生のトレードオフではなく、両立は目指せる」と力を込めた。

 


ゲスト / Guest

  • 岸本充生 / Atsuo Kishimoto

    日本 / Japan

    大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)センター長/大阪大学データビリティフロンティア機構教授 / Research Center on Ethical, Legal and Social Issues, Osaka University

  • 工藤郁子 / Fumiko Kudo

    日本 / Japan

    大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)招へい教員/PHP総研主任研究員 / Research Center on Ethical, Legal and Social Issues, Osaka University

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:40

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