2020年07月03日 14:30 〜 15:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(33) 児玉龍彦・東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクト プロジェクト リーダー(東京大学名誉教授)

会見メモ

写真左から村上氏、児玉氏

 

定量分析による抗体検査を活用し、感染状況の実態把握や重症化判定への有用性を明らかにするプロジェクトが東大先端研など6つの大学・研究機関を中心に進められている。同プロジェクトを率いる児玉龍彦氏と、資金面で支援をしている一般財団法人村上財団の創設者である村上世彰氏の2人が会見した。児玉氏はプロジェクトの最新の結果を交えながら、抗体の特性、今後の対策のあり方について話した。

司会 元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

■配布資料

 


会見リポート

無症状者の免疫解明が急務

横田 愛 (毎日新聞社専門記者)

 新型コロナウイルスの感染実態の把握や病態解明の足がかりとして注目される「抗体検査」。東大など複数の大学・研究機関は、精密測定機器を使って大規模な抗体検査プロジェクトを進める。主導する東大の児玉龍彦名誉教授は、これまでの研究から「日本で感染した方は(公式の)報告の10倍以上いると推定される」と説明。「最新鋭の科学技術を結集して大規模検査、治療、隔離、追跡の体制を作り、安心安全の社会を取り戻すべきだ」と訴えた。

 政府の緊急事態宣言の解除から1カ月が過ぎ、東京都内の新規感染者数が再び100人を超える中で記者会見は行われた。児玉氏は「日本の状態は一刻の猶予も許さない」として、新宿や池袋の繁華街について「区域全体で全員のPCR検査を一刻も早くやるべきだ」と強調した。

 これらの地域では軽症や無症状の陽性者が相次ぐが、プロジェクトの研究では、無症状者らに関して興味深いデータが示されたという。

 ウイルスなど病原体に感染すると、体内で「抗体」が作り出される。血中の抗体価を調べれば感染歴が分かる、というのが定説だが、プロジェクトが世田谷区の要請を受け、一般病院に入院中の軽症や無症状の陽性者に抗体検査を行ったところ、抗体価が上昇しない患者が見つかった。なぜ抗体価が上がらないのか、これらの患者は感染性はあるのかなどのメカニズムは不明で、児玉氏は「無症状者らの免疫を徹底的に調べないと、今の感染がなぜ広まり、なぜ急に止まるのか分からない。解明が急務だ」と訴えた。

 プロジェクトを資金面で支援する村上財団の村上世彰氏も同席し、集めた寄付と同額を財団が支援する「マッチング寄付」を行っていると説明。経済活動と感染対策の両立には科学的根拠に基づいた政策選択が必要だとして「いろんな人から寄付を募れればありがたい」と呼びかけた。


ゲスト / Guest

  • 児玉龍彦 / Tatsuhiko Kodama

    日本 / Japan

    東京大学先端科学技術研究センターがん・代謝プロジェクト プロジェクト リーダー(東京大学名誉教授) / professor emeritus of Tokyo University

  • 村上世彰 / Yoshiaki Murakami

    日本 / Japan

    一般財団法人村上財団 創設者

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:33

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