2020年06月25日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「新型コロナウイルス」(30) 自治体の奮闘① 田中良・杉並区長

会見メモ

コロナ対応の最前線となった自治体で独自の施策を講じてきた首長として、東京都杉並区の田中良区長が会見した。

杉並区では3月19日を境に感染者数が急増した。地域医療の崩壊を阻止するための措置として、区では地元医師会や区内の基幹病院と協議し、患者を受け入れるための病床の増設や「発熱外来」の設置を進めるなどの対策を講じた。

司会 川戸惠子 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

対策の遅れ、国や都は反省を

三輪 喜人 (東京新聞社会部)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、危機的な状況を迎えた医療現場。田中良・杉並区長は、地方自治体のトップとして、地域医療を守るために区独自の政策を打ち出してきた。会見では冒頭、3月19日を境に感染者数が急増し始めた区内の状況を振り返り、医療崩壊が起きたイタリアやスペインなどと同じことが東京や杉並で起きるのではないか、「戦慄が走った」と振り返った。感染者の増加は止まらず、「オーバーシュート一歩手前の医療崩壊が始まった状態」と認識したという。

 未知のウイルスに立ち向かう病院側も、新型コロナの感染者や疑いのある受診者が増えると、他の病気の外来患者や手術が減るため、収益が悪化する。病院によっては毎月、億単位の減収になり、コロナに立ち向かえば立ち向かうほど経営が苦しくなる状況だったという。

 田中氏は、区の医療崩壊を食い止めるため、地元の医師会などと協力して、区内四つの基幹病院に発熱外来センターを設置し、診療する場を集約化した。さらに、医療に専念してもらうために、新型コロナによる減収分を補填する補正予算を編成した。

 国や東京都の方針で現場が混乱することもあった。特に、軽症者の入院と自宅療養での対応の違いを問題視して科学的根拠に基づいた説明が足りなかったと強調した。

 質疑応答では、今後想定される第2波に対しては、病床の確保が第一とし、区としてもPCR検査態勢を充実させていくという。経済を萎縮させるため、過度な自粛に反対の立場だが、緊急事態宣言の発令には理解を示した。ただ、「国や東京都の医療政策が後手に回ったことで、医療崩壊が起こり、緊急事態宣言を発せざるを得なかった。そこにまずきちっと反省する立場に立って、これからのことを考えないといけない」と訴えた。


ゲスト / Guest

  • 田中良 / Ryo Tanaka

    日本 / Japan

    東京都杉並区長 / Mayer, Suginami

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:30

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