2020年05月27日 16:30 〜 17:30
「新型コロナウイルス」(24) 悪化する病院経営 猪口雄二・全日本病院協会会長

会見メモ

全日本病院協会の猪口雄二会長が、新型コロナウイルスの感染拡大により経営状態が悪化している病院の現状について、調査結果(最終報告)をもとに解説した。

同調査は全日本病院協会、日本病院会、日本医療法人協会が3団体に加盟する4332病院を対象に実施した。有効回答となる1307の病院全体で医業利益率は前年比10.1ポイント減少した。このうち新型コロナウイルス感染患者を受け入れた病院では、前年比同12ポイント減少するなど、深刻な影響があったとしている。

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

 

新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(最終報告)

全⽇本病院協会


会見リポート

大都市中心に病院経営難深刻

小出 重幸 (読売新聞出身)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者急増・医療崩壊という危機をとりあえず乗り越えたが、その後に見えてきたものは医療機関の深刻な経営悪化だった。

 全日本病院協会、日本病院会、日本医療法人協会が5月、国内の計4332病院を対象に実施した経営状況調査をもとに、猪口雄二・全日本病院協会会長が病院の現状を説明した。

 帰国者接触者外来を設けた病院は、有効回答した1307病院のうち31・1%、感染患者を受け入れたのは28・5%、そして院内感染などで一時的に病棟を閉鎖した病院は、14・7%に達していた。

 対象病院の経営指標を前年と比較すると、医業収入は全国で10・5%減少、医業利益率は10・1ポイント減少しており、特に患者受け入れ病院の利益率は12ポイント、病棟を一時閉鎖した病院は14・8ポイントと、大きく減少した。猪口会長は、「病院の利益率は、通常時でも1~2%という低空飛行で維持している病院が大半で、この落ち込みは経営に重い負担となっている」と言う。

 大都市圏では状況が一層厳しく、患者が集中した東京では、4月の一般外来患者数が前年同期の約70%に、初診患者数では約36%まで下落した。病床利用率、手術件数、救急患者受け入れ数なども、軒並み落ち込む結果になっており、「この傾向は、5月の統計でさらに悪化することが確実」と、猪口会長は指摘する。

 初診、入院患者の減少は、「病床の利用率悪化、検査の減少、リハビリの利用低下へと順送りされ、病院全体での経営危機を招く。地域医療への深刻な影響を避けるには、財政支援が欠かせない」という。

 政府は5月27日の第二次補正予算で、医療機関への支援を発表しているが、経営悪化は、新型コロナウイルス患者の受け入れ病院だけではなく、診療所から一般病院まで広がっており、第2波以降の感染拡大に対処するためには、早急な解決法が求められている。


ゲスト / Guest

  • 猪口雄二 / Yuji Inokuchi

    日本 / Japan

    公益社団法人全日本病院協会会長 / President, All Japan Hospital Association

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:24

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