2020年04月28日 13:00 〜 14:00 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(15)コロナ禍で見えた移民社会の実像と今後の課題  鳥井一平「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事

会見メモ

経済への影響が広がる中で、外国人労働者の雇止めが深刻化している。

30年余にわたり外国人のサポートを行っている鳥井一平「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事がオンラインで会見し、外国人労働者の現状や支援策のあり方について話した。

政府は技能実習生に対する支援策として「職種変更」を一時的に認める考えを示している。

鳥井氏は会見の中でこの支援策について「本末転倒」と批判した。技能実習制度の目的は技能、技術、知識を開発途上国に移転することで国際貢献することにある。鳥井氏は制度の趣旨を踏まえるなら「実習生の生活保障を優先的に考えるべき」と指摘。その上で「経済的合理性を第一義にするなら、技能実習制度は『労働者の受け入れ制度』だと明らかにしたようなものだ」と現状の制度のひずみをあらためて指摘した。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

「移住者と連帯する全国ネットワーク」

配布資料

①レジュメ

②資料データ

③4月20日付緊急共同要請

④3月18日付緊急アピール

 


会見リポート

外国人労働の歪みが表面化

寺島 努 (上毛新聞社東京支社報道部)

 新型コロナウイルスによる経済低迷は、外国人労働者を巡る日本社会の歪みを丸裸にしつつある。鳥井氏が例に挙げたのは、技術移転と国際貢献を理念としつつ、実際には安価な労働力確保に利用される技能実習制度だ。ウイルスの影響で実習生が入国できなくなり、労働の現場では人出不足が深刻化。この国の経済が実習生の労働力なしに成り立たないことが改めて浮き彫りとなり、鳥井氏は「(新型コロナが)教えてくれた」と皮肉を込めて表現する。

 また一時帰省した実習生が受け入れ先から解雇通告されたり、労働契約を結んだのに入国前に破棄されて空港で追い返されたりという事例も報告されているという。

 鳥井氏は日系ブラジル人、ペルー人などの雇い止め(派遣切り)にも警鐘を鳴らす。三重県や愛知県ではすでに動きがあり、群馬県でも今後、顕在化する恐れがあると指摘した。失職した外国人労働者への帰国支援事業が有効だったリーマンショック時と今回では、事情が大きく異なる。

 2015~16年に日系ブラジル人が多い同県大泉町の支局にいた私の印象としても、リーマンショック後も日本に住み続ける南米系住民は定住意識が強く、家族総出で派遣社員として働き、戸建て住宅のローンを払っている世帯も珍しくなかった。日本の「多民族・多文化共生社会」(鳥井氏)は「何かあったら国へ帰せばいい」という考えの通用しない段階に入りつつある。鳥井氏は、新型コロナ救済策の考え方として「国籍や在留資格に左右されるべきではない」と断言。「旅行者や収容中の非正規滞在者でも平等に救済されるべき」と訴えた。

 特定技能資格の創設を柱とした昨年4月の入管法改正から1年。外国人材受け入れの大きな流れは今後も止まることはないだろう。鳥井氏は繰り返し「我々は新型コロナによって試されている」と語った。報道機関が例外であるはずはない。


ゲスト / Guest

  • 鳥井一平 / Ippei Torii

    日本 / Japan

    「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事 / chair of the board, solidarity network with migrants Japan

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:15

ページのTOPへ