2020年04月25日 16:00 〜 17:20 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(14) 保健所の現状 内田勝彦・全国保健所長会会長

会見メモ

写真左から、内田勝彦氏、白井千香氏、清古愛弓氏、山本長史氏。

 

PCR検査への対応や感染経路の解明、帰国者・接触者相談センター業務など、新型コロナウイルスの感染拡大防止に保健所は中心的な役割を果たしている。全国保健所長会の内田勝彦会長、白井千香副会長兼危機管理委員、清古愛弓副会長、山本長史副常務理事がオンラインで会見し、保健所業務の現状や国に求めることなどについて話した。

司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

全国保健所長会

資料(1)

資料   (2)


会見リポート

人手不足、板挟みの悩みも

杉森 純 (読売新聞社調査研究本部主任研究員)

 新型コロナウイルス対策の最前線で奮闘する保健所。全国保健所長会の内田勝彦会長(右)はまず、その歴史を概説した。戦後、感染症の防疫が警察から保健所に移管され、昭和20年代は結核などの感染症対策が主な業務だった。時代とともに、公害対策、生活習慣病対策、精神保健対策、国民健康づくり、産業廃棄物対策などが加わり、業務も増えていった。住民に身近な保健行政は市町村に移管されたが、保健所の数は1990年代から4割以上減り、人手不足も目立つようになった。そうした中で迎えたのが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、帰国者・接触者相談センターのほか、PCR検査、感染者の行動調査、接触者の確認、入院先の調整、健康観察、自粛要請など多岐な業務に取り組んでいる。通常の結核の1年分の業務を1カ月間で行う状況だと訴えた。

 白井千香副会長(左)は、全国の保健所への緊急アンケート調査の結果を発表した。24時間対応の相談センターの運営は66%が民間への委託なしに自治体の直営で行われ、そのうち63%は保健所だけで対応している。代替休暇制度は半数以上であるが、実際には取れないのが実状だという。また、患者から診察や入院を拒否されたり、医療機関からPCR検査などで不満をぶつけられたりする一方、行政からは相談などの対応を丸投げされて、板挟みの状態になっているという現場の嘆きの声も紹介された。

 北海道や東京の保健所長も加わった質疑応答では、少ないと言われるPCR検査について、陽性者の受け皿の整備が重要とした上で、地域の状況に合わせて、対応を変える必要があるとした。また、院内感染が広がり、救急医療やがん治療などにも影響が出ていると、医療崩壊への危機感を示した。保健所としても、乳幼児の健診や、自殺予防、高齢者の運動・認知機能の低下対策などの本来の業務に手が回らない状況だと訴えた。


ゲスト / Guest

  • 内田勝彦 / Katsuhiko Uchida

    日本 / Japan

    全国保健所長会会長(大分県東部保健所所長)

  • 白井千香 / Chika Shirai

    日本 / Japan

    全国保健所長会副会長兼危機管理委員長(枚方市保健所所長)

  • 清古愛弓 / Ayumi Seiko

    日本 / Japan

    全国保健所長会副会長(葛飾区保健所所長)

  • 山本長史 / Nagafumi Yamamoto

    日本 / Japan

    全国保健所長会渉外担当副常務理事(北海道渡島保健所兼八雲保健所所長)

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:14

ページのTOPへ