2020年04月24日 16:00 〜 17:00 オンライン開催
「新型コロナウイルス」(13) 高齢者・障がい者の支援事業  小島美里・NPO法人暮らしネット・えん 代表理事

会見メモ

介護サービスなどを提供する4事業所代表と訪問ヘルパーは連名で、国への要望書を4月10日に提出した。要望書では「新型コロナウイルスに感染の疑いがある利用者への訪問介護の対応に苦慮している。市町村や保健所はホームヘルパーに安全確保のため具体的な指示を行い、マスク・防護服の支給などの施策を実施すべき」と求めている。この要望書をとりまとめた小島美里さんが、介護サービスの現場の苦労や、今回の事態で明らかになった制度の問題点などを話した。「暮らしネット・えん」は、訪問介護、グループホームの運営、小規模多機能型居宅介護や配食サービスなどを行っている。

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

「暮らしネット・えん」

『訪問系サービスにおける新型コロナウイルス対策の要望書』


会見リポート

在宅介護崩壊への強い危機感

清川 卓史 (朝日新聞社編集委員)

 自分が感染するのではないか、利用者や自らの家族に感染させてしまうのではないか。いくつもの不安を抱えて毎日ケアにあたっている。介護現場を支えるホームヘルパーの状況を、小島さんはそう語った。

 4月10日、高齢者介護や障害福祉の訪問系サービスに関わる事業者・介護労働者とともに、「新型コロナウイルス対策の要望書」を安倍晋三首相宛てに提出した。

 まず強調したのは、介護保険スタートから20年、訪問介護の専門性が軽んじられ、一貫して介護報酬が抑制され続けてきた経緯だ。その結果、有効求人倍率13倍という極度の人材不足と、「70代は当たり前」というヘルパーの高齢化が進んでいる。ギリギリで回していた現場を、コロナ危機が直撃している。

 国への要望の第一は、きめ細かな感染予防、感染対策の徹底だ。指摘したのは、利用者や介護労働者に感染の疑いがある場合の検査態勢が整っていないこと。マスクや消毒用アルコールなどの不可欠な備品も入手困難で、多くの訪問系事業所にはシャワーなどもない。小島さんは「これでは感染疑いのある家にヘルパーを出すことはとてもできない」と言う。

 さらに訪問介護事業所内で感染が生じたとき、打てる手はあるのか。小島さんは「ぞっとするような状況」と率直に語った。現場を支えていたヘルパーが感染を恐れて次々と辞めてしまえば、感染が終息しても訪問介護事業所はつぶれてしまう。

 そうした事態を招かないために強く求めているのは、濃厚接触や感染疑いがある利用者を危険をかえりみずにヘルパーが訪問するときの、新たな介護報酬や特別手当の創設だ。

 「新型コロナが終息したら、在宅介護事業所は軒並み閉鎖という事態もあるかもしれない。在宅介護の崩壊を危惧している」。小島さんは「介護崩壊」への強い危機感を隠さなかった。


ゲスト / Guest

  • 小島美里

    日本

    NPO法人暮らしネット・えん 代表理事

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:13

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